拘縮が見られたら…「廃用症候群」予防の具体的な方法
そして、関節を曲げる筋肉のほうが伸ばす筋肉より大きいので、曲げる力のほうが強く働き、曲がったまま固まってしまうようです。いったん筋力低下や拘縮が進行してしまうと改善するのは非常に困難なので、やはり予防することが大切だと言われています。
怪我や手術が原因で、四肢や身体が動かせないのが一時的である場合には、早期から運動やリハビリを行って予防に努めることがすすめられています。
ところが認知症が進行していくつもの関節に拘縮が見られる場合には、予防はおろか改善させることも非常に困難です。進行するのを少しでも抑えられる方法があれば良いでしょうが、確実なものはないようです。
その上、寝たきりになって身体が動かせないと、圧力がかかる身体の部分に褥瘡(じょくそう)ができやすくなります。また、拘縮もさらに進行すると、手をギュッと強い力で握りしめて爪で皮膚を傷つけたり、手のひらの清潔が保てなくなり、真菌などによる感染症が起こったりします。
これらはケアの工夫である程度予防や軽減ができます。例えば身体とベッドやいすの間にすき間を作らないようにクッションやタオルを置いて適切なポジショニングを保ったり、定期的に身体の向きを代える体位変換を行ったり、手にスポンジなどを握らせたりする方法などがあります。
※1 Clinical Stages of Alzheimer’s. Fisher Center for Alzheimer’s Research Foundation
※2 関節可動域制限の発生メカニズムとその治療戦略、沖田実 理学療法学 41(8):523-530,2014
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近藤 靖子
和歌山県和歌山市に生まれる。京都大学医学部および同大学院卒。 医療に関しては麻酔科、眼科、内科、神経内科、老年内科の診療に従事。1994年家族と共に渡米し、オハイオ州クリーブランドのクリーブランドクリニックにて医学研究を行う。 その後、ニューヨーク州ニューヨーク市のマウントサイナイ医科大学、テキサス州ヒューストンのMDアンダーソンがんセンターにて医学研究に従事。 2006年末に帰国し、2008年千葉県佐倉市にさくらホームクリニックを夫と共に開院し、主に高齢者医療を行う。