円安は「変わらない日本」への警鐘
「日本経済は、十分な構造改革が断行された場合、2%の潜在成長力がある。我が国の産業が活力を取り戻すためには、新たな雇用機会を生み出し経済活力の基盤となる新事業創出がカギとなる。
そのためには、企業を積極的に支援するとともに、イノベーションが次々と起こる社会にすることが必要である。
21世紀に向かって、日本経済をリードするような新たな産業を、国家的なプロジェクトとして育成していかなくてはならない。
特に、情報通信、環境、医療・福祉・バイオ、流通・物流および金融は、21世紀において高い成長が期待されるとともに、今後人財の流動化が進んでいくなかで質の高い雇用機会の創出が期待される重要な戦略分野である」
これは、いまから23年前の1999年、当時の小渕恵三内閣時代に取りまとめられた経済戦略会議の提言書の一文です。
岸田内閣の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)」と「新しい資本主義」で掲げる実行計画、「成長と分配をともに高める『人への投資』をはじめ、科学技術・イノベーション投資、グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーションへの投資を柱とする『新しい資本主義』の実現に向けた重点分野への投資を行う」との大きな違いを感じることができません。
もし23年前に謳われた政策が本気で実行され続けていたら、いま見えている世界は、おそらく違うものになっていたでしょう。
長期間にわたり大規模な金融緩和の出口を見い出すことができない状況のなか進んだ今回の円安は、制度疲労を起こしている社会システムや財政運営の変革、イノベーションや新たな産業創出を土台にした経済力の喚起、その起点となる個性的な教育機会の創出など、日本の力を高める施策を本気で実行してこなかったことへの警鐘に他ならないと感じます。
政策のキーワードは、1999年の経済戦略会議の提言書のなかにも謳われている「構造改革の断行」ではないでしょうか。
鎌田 恭幸
鎌倉投信株式会社
代表取締役社長
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