玉石混交の「ESG」と名のついた投資
近年、世界的にESGをテーマにした投資商品がふえています。
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字で、単に投資によるリターンを求めるだけではなく、投資家が、投資する企業の環境や社会に配慮した取り組みを評価することで、企業が果たす社会的責任の範囲を広げていこうとする投資手法をいいます。
たとえば、ESG評価のE(Environment:環境)では、地球温暖化対策や生物多様性への対応、リサイクルなどの環境保全策などが、S(Social:社会)では、女性管理職比率、ダイバーシティ、産休や育休取得、人財教育や福利厚生などが、G(Governance:ガバナンス)では、取締役の構成、内部統制機能、BCP対応力などが評価されて、投資先が選定されます。
こうした投資手法がふえはじめたのは、2006年、国連アナン事務総長(当時)が資産運用会社や年金基金、金融機関等の機関投資家に対してESGを考慮した「責任投資原則」を表明するよう提唱したことがきっかけといわれています。
このようなESG投資に関するレポートを読むと、現在、ESG関連の運用資産残高は、世界全体で35兆ドル(約4,900兆円)ともいわれ、日本でも関連する運用商品は増加傾向にあることが書かれています。この金額は、世界の機関投資家が運用する総資産の実に3分の1を占めるといわれていますので、規模だけではなく、増加の速さに驚きます。
しかし、その一方で、ESG投資を打ち出しながらも、資産運用会社、企業側双方において実態をともなわない、いわゆる「ウォッシュ(見せかけ)」の問題も指摘されており、それを規制する動きもではじめています。
日本でも昨年、金融庁が実態調査を実施し、ESGに関する公募型投資信託の情報開示や運用態勢の整備を「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」に盛り込む方針を示すなど、規制が強化されはじめました。
なぜこのような本末転倒ともいえることが起きるのでしょうか。