(※写真はイメージです/PIXTA)

今月、シリコンバレー銀行やクレディ・スイスなど、欧米で大手銀行の経営破綻や経営不安が相次ぎました。米国・スイス両国政府の異例の対応によって金融市場には一定の安心感をもたらしましたが、日本に影響はないのでしょうか。鎌倉投信の代表取締役社長である鎌田恭幸氏が、この「金融不安」に対する日本への影響と投資家が持つべき心構えについて解説します。

欧米で大銀行が相次いで経営破綻…日本への影響は

2023年3月、米国の2つの銀行、主にスタートアップ企業との取引が多い「シリコンバレーバンク(以下、SVBという)」と、暗号資産関連企業との取引が多い「シグネチャーバンク(以下、SBという)」が相次いで経営破綻し、世界の金融市場に緊張が走りました。

 

SVBの総資産は、昨年末時点で30兆円弱と大きく、日本でいえば地銀上位行並みです。米国では、2008年9月に破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ過去2番目の規模の銀行破綻ですので、そのインパクトの大きさが想像できます。

 

さらに欧州では、スイス第2位の銀行「クレディ・スイス(以下、CSという)」が経営不安に陥り、スイス当局の働きかけによって、同国の最大手銀行「UBSグループ」による買収合意が極めて短期間のうちに成立し、負の連鎖が回避されました。

 

2008年9月に起きた「リーマンショック」を想起させるこうした動きは、世界の金融危機の予兆なのでしょうか。あるいは、日本の金融機関への影響はあるのでしょうか。

 

SVB、CSが抱えていた「固有の事情」

今回起きたSVBの経営破綻、CSの経営不安は、次のような固有の事情によるところが大きく、日本を含む世界の金融システム全体に与える影響はb限定的であるbb、とする見方が一般的です。

 

固有の事情とは、SVBの場合、

 

・低金利下で急拡大した同社の預金の多くは、期間が長めの国債や不動産担保証券などで運用されており、金利上昇によって多額の含み損を抱えていた。

 

・融資先の多くがテクノロジー、ヘルスケア関連企業で、金利上昇下で厳しい経営環境に置かれていた。つまり、融資先の信用リスク、デフォルトリスクが全体的に高まった状態にあった。

 

・預金者の多くが、個人ではなく主に新興企業などで、その80%以上が預金保険の対象外だった。上述のことと相まって、預金の流出を加速させた。

 

一方のCSは、

 

・マネーロンダリング(資金洗浄)や汚職、スパイスキャンダルへの関与、顧客情報の流出など、ずさんな内部管理態勢が信頼を失わせた。

 

・レバレッジを効かせた派生型の金融商品によって破綻した「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」に関連した損失が影響した。

 

といったものです。

 

加えて、米国金融当局は、SVB預金者の預金を全額保護することを決め、スイス政府は、UBSグループによるCS買収に対して多額の保証をするなど、両国政府・当局による極めて異例な対応をとったことで、金融市場に一定の安心感をもたらしました。

 

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