(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジネスを展開するにあたり、「株式会社」という形態をとると、さまざまなメリットがあります。個人では実現できない、大規模&ダイナミックな事業が行えるなどロマンがありますが、一方、その仕組みにも、莫大な資金を集めたり、権利を持つ人たちが収益を山分けしたりといった、実務的なメリットや魅力があります。経済評論家の塚崎公義氏が初心者に向けて解説します。

株主には、大儲けの可能性も、大損のリスクもあるが…

企業が株主から50万円、銀行から50万円の資金を調達して事業をおこなっているとします。たとえば100万円で仕入れたパンが110万円で売れた場合、企業の財産が10%増えたことになります。

 

このとき、銀行には借りた50万円だけ返済すればよく、儲かった10万円は株主に配当されます。つまり、会社が10%しか儲かっていないのに、株主の財産は20%増えているわけですね。

 

もっとも、いいことばかりではありません。100万円で仕入れたパンが売れ残って90万円しか売れなかった場合、会社は10%しか損していないのに、銀行に50万円返済した残りは40万円に減ってしまうので、株主の財産は2割も減ってしまうことになります。

 

このように、株主になるということは、大儲けのチャンスがある一方で大損のリスクもあるのです。上場企業の株を持つと、株価が暴騰するチャンスと暴落するリスクがあるわけですが、上場していない株であっても似たようなリスクがあるわけですね。

株主有限責任という「ヘンな制度」がある理由

株主と銀行の関係を考える際に、もうひとつ重要なことがあります。それは、株式会社が借金を返せなくなった場合、株主は会社の借金を肩代わりする必要が無い、ということです。「これを株主有限責任」と呼びます。

 

パンが大量に腐ってしまい、会社の財産が30万円に減ってしまった場合、銀行としては「50万円貸したのだから、50万円返して欲しい」と思うわけです。「株主は、会社が儲かったときには配当をもらうのだから、会社が損したときには銀行への借金を肩代わりすべきだ」というわけですね。

 

考え方としては、まったくその通りなのですが、法律を作った人は、そうは考えませんでした。「株主は、株式を購入したときに支払った金はゼロになるかもしれないが、それでも足りない分は追加で負担する必要はない。つまり、パンが大量に腐ってしまった場合には、銀行が損失の一部を負担すべきだ」というわけです。

 

塚崎パンのような小さな会社であれば、株主が社長のことや会社のことをよく知った上で投資しているでしょうから、銀行の言い分も説得力がありますが、たとえば電力会社には数百万人の株主がいるわけで、彼らが会社のことをよく知らずに、何となく儲かりそうだと考えて気楽に投資しているかもしれません。

 

そんなときに電力会社が大事故を起こして大損をしたとしても、数百万人の株主に莫大な金額の請求書がいくのは可哀想な気がしますね。

 

じつは、単に可哀想だということではなく、もっと重要な理由があるのです。電力会社が破産した場合には、第二電力会社を作る必要があるわけですが、「第二電力会社を作るので、皆さん出資しましょう」と政府が呼びかけても、誰も出資しないでしょう。数百万人の株主が悲惨な眼に遭ったことを皆が知っているからです。

 

そんなことでは困るので、「電力会社が万が一破産しても、出資してくれた株主の損失は出資してくれた金額だけなので、安心して出資してください」といえるように、この法律ができているわけです。

 

そんな法律があると銀行としては不安ですから、「担保を要求する」等々の様々な対策をするわけですが、詳しい話は別の機会にしましょう。

 

今回は以上です。なお、本稿はわかりやすさを優先していますので、細かい所について厳密にいえば不正確だ、という場合もあり得ます。ご理解いただければ幸いです。

 

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塚崎 公義
経済評論家

 

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