ストレスは心臓病のリスクを高める
心不全に限らず、体調が悪くなると誰もが強いストレスを感じるものです。「このまま体調が回復しなかったらどうしよう」「職場に復帰できるだろうか」「治療費がかさんで、生活が成り立たなくなったら…」など、人それぞれ、さまざまな不安を感じます。
反対に、日常生活のストレスが蓄積すると、心身のバランスが崩れて病気を発症することもあります。特に、心臓とストレスは強い関係があり、ストレスは心臓病の大敵とされています。
いったいなぜストレスは心臓病のリスクを高めるのか、理由としてまず挙げられるのが、ストレスが交感神経に与える影響です。
ストレスが強くなると、人間の体内では交感神経の働きが高まります。交感神経は別名「闘争と逃走(Fight and Flight)の神経」といわれるように、敵から逃げたり、獲物を捕まえたりといった緊張状態のときに活発に働きます。
闘争したり逃走したりするときには、体を敵と戦える状態にしなければなりませんから、自然と心拍数は高まり血圧が上がります。当然、心臓のポンプ機能も働きが慌しくなり強い負担を強いられます。
また、血圧が上がるということは、大量の血液がどっと一気に流れるということですから、血管にも大きな負荷が掛かります。
その結果、心臓は悲鳴をあげることになって働きが鈍り、心不全をはじめ、さまざまな心臓病を発症するリスクが高まるのです。
ストレスが招く喫煙・飲酒・ドカ食い・不眠なども大敵
そのほかストレスが心臓病のリスクを高める原因としては、ストレスが喫煙や飲酒などを招きやすいということが挙げられます。
おそらく誰でも経験したことがあると思いますが、ストレスが強くなると「やけ酒だ」といってたくさんのお酒を飲んだり、禁煙に成功していた人が再び喫煙を始めてしまったり、悪癖が現れてくることがあります。
人によっては甘いものを大量に食べたり、ドカ食いをしたりすることもあると思います。そうした習慣は糖尿病や肥満のリスクを高めますし、血圧を上げる原因にもなります。
さらにストレスが溜まってくると、不眠になる人もいます。不眠は血圧や血糖値の上昇につながりますから、これも心臓病のリスクになります。
「ストレスといかに付き合っていくか」が重要
このように、ストレスは心臓病と深い関わりをもっており、「ストレスといかに付き合っていくか」が、心臓病を発症しないためには重要だということが分かります。
とはいえ、現代はストレスの多い時代です。子どもでさえ大きなストレスにさらされる場合が多いのですから、毎日仕事や家事に追われている大人ならなおさらです。
そのために大切なのは、「ストレスをなくす」ことではなく、「ストレスとうまく付き合っていく」ことです。
「ストレスが溜まってきたな」と感じたら、うまく解消する方法を普段から見つけておくことが大切です。趣味で気分を変えるのも、友達と話をするのでもいいです。体を動かして気分をスッキリさせるのでも、音楽や絵画などのアートに触れるのもいいと思います。
ちなみに、私が普段から心掛けているのは、嫌なことがあったらすぐに気分転換するということです。「すぐに」というのがポイントで、嫌なことはどんどん蓄積し、泥のように心に沈澱してしまいます。そして、時間が経てば経つほど除去するのが難しくなってしまいます。
私の場合は、嫌なことがあったら、好きなクラシック音楽を聴いたり、夕食のときに大好きなスコッチか泡盛を1杯だけ飲んだりします。時には妻と食事に出掛け、リフレッシュすることもあります。また、普段から苦手な人とはできるだけ付き合わないようにして、嫌な気持ちにならないよう努力します。それでも、どうしても嫌なことがあったら、さっさと布団をかぶって寝てしまいます。
自分なりにストレスを溜めない方法や解消する方法を見つけておけば、上手に気分転換しながら毎日を過ごせるはずです。
大堀 克己
社会医療法人北海道循環器病院 理事長
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