親の介護をしたら相続分が増える「寄与分」
共同相続人の中に、亡くなった人に対して特別な寄与をして財産の増加や維持に貢献をした者がいる場合、ほかの相続人との公平性をはかるために貢献度に応じて本来の相続分に上乗せした遺産の取得を認める制度があります。これが、「寄与分」です。
寄与分として認められる行為は、上の図表のように分類できます。また、寄与分をもらうには、寄与した内容は“特別”なものである必要があり、被相続人と相続人の身分関係(夫婦関係、親子関係等)から期待される範囲を”超えた”貢献があることが求められます。
そのため、具体的には次の3つのことが求められ、さらにその寄与により被相続人の財産が維持または増加したことが要件とされています。
「専従性」・・・片手間ではなく専属で、労力を費やしていた
「継続性」・・・一時的ではなく、ある程度の年数以上従事していた
「無償性」・・・被相続人から対価をもらっていない
たとえば、父の会社で何年も給料をもらって働いていたという場合は、父に対する労務の提供ではなく会社に対する労務の提供であり、また有償なので、寄与分の対象にはなりません。
「寄与分」が認められるポイント
- 共同相続人のうちの1人であること
- 寄与とされる行為をしていること(労務の提供型、財産の給付型、療養看護型など)
- 被相続人の財産の維持又は増加があったこと
- 「特別」の寄与(専従性・継続性・無償性)をしたこと
家庭裁判所が認定する寄与分のハードルは非常に高い
療養介護も寄与分の対象とされる行為です。けれど子が親を介護したとしても、通常の親子関係から当然行うべきと考えられる介護内容の場合には寄与分は認められません。
介護をした人の場合、寄与分が認められるめやすは、「要介護2以上の親を、無償で、仕事を辞めて専属で、3年(最低でも1年)以上自宅で介護した」ことだとされています。
ヘルパーを頼むと財産が減るけれど、娘が介護をしたから財産が減らなかったとして「財産の維持に寄与した」ことになります。病院や介護施設に入っていた場合は、寄与分は認められません。
実際に寄与分が認められた例として、平成19年に大阪家庭裁判所で3年分の寄与分として876万円が認められたケースがあります。……けれど、これで「報われた」と思えるでしょうか?
計算すると、1日当たり8,000円です。何年も、毎日付き添って介護をして、寄与分として認められる金額はこの程度です。