「相続」を「争族」にしないために―。相続トラブルは、家族信託と遺言を使って一気に決着をつけられます。本連載は、司法書士・池田千恵氏の著書、『実際にあった相続トラブル40例!解決策大全』(ビジネス社)の中から一部を抜粋し、家族の間で起こる相続トラブルの対処法を紹介します。

親が認知症になって口座が凍結状態になってしまった

  • 被相続人‥‥‥母
  • 法定相続人‥‥長女、次女(相談者)、三女
  • 遺産‥‥‥‥‥銀行預金(2,700万円)
  • 特記‥‥‥‥‥母は認知症で預金凍結状態だったため、次女が介護費などを立て替えていた。

次女からの相談内容

父が亡くなり母は一人暮らしをしていました。子どもは次女の私を含めて3人で、それぞれ結婚して他県に住んでいます。

 

家族で集まったときに、母から近頃もの忘れをすることが増えてきたことを聞き、私(次女)は母を引き取って同居することにしました。母からは、「お父さんから相続した自宅を売ったお金で老後の面倒をみてほしい」と言われていました。

 

その後、母は認知症になり、デイサービスを利用することになりました。そのデイサービスの利用料を母の銀行口座から自動引き落としにしようと銀行へ行ったところ、銀行の窓口で「本人でなければ手続きできません」と追い返され、翌日母を連れてもう一度銀行へ行くと、名前を書くこともできない母の状況を見て銀行員に「この状態では手続きは無理です。成年後見人を付けてください」と言われました。

 

成年後見人をつけなければ母の銀行預金を使えず、デイサービスの費用の自動引き落としはもちろん、預金の解約や引き出しさえもできません。けれど成年後見人が付くと制約もありコストもかかると聞いていたので、とりあえず私(次女)が母の介護費用などを立て替えることにしました。

 

 

先日、母が亡くなりました。遺言がなかったため遺産分割の話になったとき、長女が「お母さんの遺産は銀行預金だけね。きれいに3等分しましょう」と言い、三女もそれに同意したのです。

 

それを聞いて私は、「お母さんの介護費用を立て替えていた分は別にして、私がもらうわ」と言いましたが、長女と三女は聞き入れてくれず遺産は遺産だと主張します。立て替えた介護費用だけでも私の取り分に上乗せはできないでしょうか。

 

次ページどうなったか、何が最適だったか

本連載は、2022年7月1日刊行の書籍『実際にあった相続トラブル40例!解決策大全』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

実際にあった相続トラブル40例! 解決策大全

実際にあった相続トラブル40例! 解決策大全

池田 千恵

ビジネス社

「相続」を「争族」にしないために―。元国税調査官・大村大次郎氏が推薦する話題の相続関連書。著者で「池田千恵司法書士事務所」・「岡崎家族信託・相続手続き事務所」所長である池田千恵氏は、「相続トラブルは『家族信託』…

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