(画像はイメージです/PIXTA)

「相続」を「争族」にしないために―。相続トラブルは、「家族信託」と「遺言」を使って“一気に”決着をつけられます。本連載は、司法書士・池田千恵氏の著書、『実際にあった相続トラブル40例!解決策大全』(ビジネス社)の中から一部を抜粋し、家族の間で起こる相続トラブルの対処法を紹介します。

遺言に書けること、書けないこと

遺言のルール

 

  • 遺言の方式に合っていること

 

「遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない(民法第960条)」

 

遺言がその効力を発効するときには、遺言をした人は亡くなっています。ということは、本当にそれが遺言者本人の意思であったのかどうかを本人に確認することはできません。

 

そこで、厳格な方式を定め、この方式を守らないと遺言として認めない、としています。自筆証書遺言の訂正のしかたが細かく定められているのもそのためです。誰かが勝手に訂正して、遺言を偽造してしまうことを防止する機能もあります。

 

  • 満15歳以上であること

 

遺言は代理で行うことができませんので、親(親権者)が子を代理することはできません。民法では、「15歳に達した者は遺言をすることができる」と規定されています。

 

契約などの法律行為を単独で行う際に必要である「行為能力」は未成年者にはありませんが、15歳以上であれば遺言を作成することができる「遺言能力」がある、としているのです。

 

  • 遺言能力(判断能力)があること

 

遺言をするには、「遺言能力(遺言の内容をきちんと理解し、その結果がどうなるかを理解する能力)」が必要です。だから遺言能力がない人が作成した遺言は無効となります。

 

わかりやすくいうと、遺言を作成したとき、医者から「認知症(の疑いがある)」と診断されている場合など、遺言能力に問題があれば遺言が無効となってしまう恐れがある、ということです。これは認知症に限らず、判断能力の低下をもたらしうる脳梗塞(のうこうそく)や重度のうつ病、統合失調症のような病気も対象になります。

 

公正証書遺言を作る場合には、遺言者に遺言能力があるかどうかは公証人が判断します。面談をして質問をし、その受け答えを確認します。医師の診断書を確認したり、長谷川式スケールを用いて認知機能の確認をしたりすることもあります。

 

ただ、遺言能力があるのかないのかという判断は、非常にむずかしい問題です。認知症だから一概にダメというわけではなく、軽度の認知症であれば、医師の判断などを仰ぎ、公証人が関与するなどして、法的に有効な遺言をすることができるケースもあります。

 

「すべての遺産を妻に相続させる」という単純な内容なら判断できるけれど、「この不動産は妻に相続させ、あれは長男、それは次男。金〇円は長女、金△円は次女、残りは妻と長男が2分の1ずつ」などという複雑な内容の遺言はできない、とされるケースもあります。

次ページ「遺言に書けること、書けないこと」まとめ図

本連載は、2022年7月1日発行の書籍『実際にあった相続トラブル40例!解決策大全』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

実際にあった相続トラブル40例! 解決策大全

実際にあった相続トラブル40例! 解決策大全

池田 千恵

ビジネス社

「相続」を「争族」にしないために―。元国税調査官・大村大次郎氏が推薦する話題の相続関連書。著者で「池田千恵司法書士事務所」・「岡崎家族信託・相続手続き事務所」所長である池田千恵氏は、「相続トラブルは『家族信託』…

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