リストラを当然のこととして話す経営者は「最悪」
私が考える、経営においての最大のタブーはリストラです。
例えば家電業界では、欧米型の経営の合理化を真似て大手企業がどんどんリストラを行った時期がありました。その結果、リストラされた技術者たちが国外に流失し、海外メーカーは労せずして日本の技術を手に入れることができたのです。
リストラの影響力は、それほど大きいと知るべきです。
「誰かの職を奪い、不幸にすることで会社を生き残らせる」というリストラは「関わる人すべてを幸せにする」とは対極の発想です。経営が厳しいから、リストラをして人件費を削ることを当たり前のように話すような経営者は、はっきりいって最悪だと私は思います。
そうしたコストカットの視点から社員を減らそうとするというのは、社員たちを「会社が利益を上げるための道具」ととらえている証にほかなりません。
実はわが社でも、過去にリストラの話が持ち上がったことがありました。バブルが崩壊し、公共事業が減っていったタイミングで、役員の間で議題に上がりました。
「周囲の建設会社でも、リストラが行われている。うちでも、体質改善のためにリストラをやるべきではないか」
当時、私は専務になりたてでしたが、「絶対にだめだ」と徹底して反対しました。
もし社員たちを辞めさせねば経営が成り立たないなら、その責任は会社の舵取りを担ってきた経営陣にあります。まずは役員たちから辞めていくべきで、社員の首を切るなどもってのほかです。
幸いほかにもリストラに反対する役員がいて、結果的にこの案は採用されず、その後阪神大震災による復興特需で建設業界の景気が持ち直したのもあり、そのまま立ち消えになりました。
わがグループでは、創業以来、誰一人リストラしたことがありません。
犠牲の上に成り立つ「安くて良い品」
現代の資本主義においては、会社を永続的に拡大していくことが正しいことだとされています。地域のシェアを取ったら、次は県、そして全国……まるで日本統一を夢見る戦国武将のようにほかの地域へと進出し、ライバル企業のシェアを奪おうとします。
相手が何も悪いことをしていないのに、こちらから戦を仕掛けるようなこうしたやり方が私は嫌いです。シェアを奪われた側では、必ず不幸になる人が出るからです。
また、同業者の間で戦が起これば最後は必ず「値引き合戦」になり、資本力で劣る会社から淘汰されていきます。適正価格を大きく下回るような値付けをして売りさばくというのは、最もやってはいけないことの一つです。値段が安く、かつ品質が良いものなど、本来であれば存在しません。
もしそれが実現されているなら、どこかに必ず犠牲者が存在します。薄利で、働けど働けど生活が豊かにならず、泣いている人の犠牲の上に、「安くて良いもの」が成り立っているのです。
そして一度お客さまが安い値段に慣れてしまえば、それを元の水準に戻すのは容易ではなく、その事業自体が「儲からない商売」になりかねません。
わがグループの市場シェアは全体の3割ほどですが、私はもうシェアを広げていくつもりはありません。これ以上シェアを取れば寡占状態に近づいていき、地元の小さな会社の経営を圧迫してしまう恐れがあるからです。
ただでさえ地方の建設業は、どこを見ても景気の悪い話で溢れています。全国の同業者の集まりに出かけて行っても聞こえてくるのは不満や愚痴ばかりで、特に中小企業の経営者たちは深刻な表情で、私に経営の相談を持ち掛けてきます。
そんな姿を見ていて私も「なんとかこの業界をもっと元気にしたい」と思うようになり、それが本記事を執筆した動機の一つでもあります。
荒木 恭司
島根電工株式会社 代表取締役社長
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