バブル崩壊後のすさまじい建設不況を乗り越えて生き延びた、山陰地方のある中小建設業者。しかし、日本ののどかな地方都市も、欧米型資本主義から逃れることはできません。従業員たちが必死に「勝ち残れるビジネスモデル」を編み出し、収益確保に努めたところで、さらなる課題が立ちはだかります。それは「経営者の思考」です。
「なんのための経営か」との問いへのたった1つの答え
山陰地方という厳しい経済環境下において独自のノウハウや仕組みを生み出し、それにより成長を続けてきたわが社ですが、たとえ同業者であっても、私たちのノウハウや仕組みをそっくりそのまま取り入れるだけでは成功できません。
仕組みを回すには社内風土の改革も必要であり、社内風土のあり方と直結するのが、経営者のものの考え方です。
例えば、個人の利益の追求を最も大切なこととして経営を行うなら、社内でも競争を是とする風土が培われ、弱肉強食という雰囲気になってしまいます。顧客第一主義を徹底すれば、残業も厭わずお客さまのために尽くすのが当たり前という風土になるかもしれません。
このように、経営者が何を重視しどのような方針で会社を経営していくのかで、社内風土は大きく違ってきます。
いったいなんのために経営するのかという問いに対しては、会社を大きくするため、上場させるため、ライバル企業に打ち勝つため、業界でトップになるためなど、さまざまな答えが返ってくるかと思いますが、これらはいずれも経営の目的ではなく、ただの結果に過ぎないと私は考えています。
なんのために経営をするのか、どうしてこの事業を推進しているのか、なぜここにみんなで集まって仕事をしているのか。この問いに対する答えは、本質的にはたった一つしかありません。
「自らの会社に関わる人々すべてを、幸せにする」
これこそが会社の存在意義であり、あらゆる事業の目的であると私は思います。
会社の風土も、本来はそこから培われていくべきものです。
【12/18(木) 『モンゴル不動産セミナー』開催】
坪単価70万円は東南アジアの半額!! 都心で600万円台から購入可能な新築マンション
島根電工株式会社
代表取締役社長
1949年島根県生まれ。72年島根電工株式会社入社。米子営業所営業課長、出雲営業所所長を経て96年常務取締役。専務取締役、代表取締役副社長を経て、2010年代表取締役社長に就任。
公共事業受注主体から「住まいのおたすけ隊」による小口工事の受注拡大に成功。右肩上がりの成長を続け、バブル期よりも売上を3倍に伸ばす。介護・育児、半日休暇などの有給休暇制度を充実させる一方、ノー残業デーを週3日実施、離職率1%を誇る。また、業界活性化を目的とし全国フランチャイズ展開を開始、同業者50社以上の経営支援を行う。
島根電工株式会社を中心に、いずれも同社100%出資のシンセイ技研株式会社、岡田電工株式会社、協和通信工業株式会社から構成される島根電工グループのトップも務める。
公立大学法人島根県立大学理事、一般社団法人日本電設工業協会理事、一般社団法人島根県電業協会会長、島根県職業能力開発協会会長、島根経済同友会副代表幹事などの要職を兼任。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載地方建設業の成功事例に学ぶ、中小企業「勝ち残り戦略」