今回は、個人経営の歯科医院の所得税とその節税法を紹介します。※本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

所得とは単純に「売上から経費を引いた金額」ではない

個人開業の場合、その年の1月1日から12月31日までに生じた医院の利益に対して、所得税がかかります。

 

しかし売上から経費を差し引いただけの単純な金額ではありません。計算方法は以下のようになります。

 

①事業所得を出す:

売上−経費

 

②合計所得を出す:

事業所得+他の所得(他院でアルバイトした給料や、セミナーの講師料など)

 

③課税所得を出す:

合計所得−所得控除(医療費控除や寄付金控除、生命保険控除、扶養控除など)

 

④課税所得に一定の税率をかけて所得税を出す:

課税所得金額が195万円以下→税率5% 控除額0円

195万円超~330万円以下→税率10% 控除額9万7500円

330万円超~695万円以下→税率20% 控除額42万7500円

695万円超~900万円以下→税率23% 控除額63万6000円

900万円超~1800万円以下→税率33% 控除額153万6000円

1800万円超〜4000万円以下→税率40% 控除額279万6000円

〜4000万円超→税率45% 控除額479万6000円

 

⑤納税額を出す:

所得税から、住宅ローン控除などの税額控除、前払いで支払っている源泉所得税、予定納税などを差し引く。

 

予定納税とは、所得税の源泉徴収と同様、税金の前払い制度です。前年分の納税額が多くなった場合、今年も同じくらいの税金が発生するという前提で、7月末と11月末にそれぞれ前年分納税額の約3分の1を前払いします。

 

医院経営の資金繰りが悪化する原因の1つが、こうした予定納税の支払いです。売上の落ち込みと納税のタイミングが重なると苦しくなってしまいます。

 

これを回避するためにも、納税のタイミングを把握し、常に資金を残しておくことが重要です。

生命保険、小規模企業共済・・・控除の対象もさまざま

<節税のポイント>

●青色申告特別控除の活用

複式簿記にて帳簿の作成及び7年の保管の期限内に申告することによって65万円の控除が受けられる。

 

●所得控除の活用

生命保険料控除:個人で生命保険を支払った場合、最大12万円の控除が受けられる。

医療費控除:年間で10万円以上の医療費を払った場合か合計所得×5%のいずれか少ない金額が控除される。

社会保険料控除:国民年金の上乗せ分として国民年金基金に加入すればその年に支払った額の全額が控除される。

 

●小規模企業共済の活用

個人事業主のための退職金制度。毎月1000円~7万円の範囲で掛金を支払う。この掛金は全額、個人の所得から控除されるため、節税しながら退職金を積み立てることができる。医院の廃業や解散のときに解約をすれば、税率が低い退職所得として受け取り、「退職所得控除」も適用できる。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

中島 由雅,広瀬 元義

あさ出版

新規開業の方法、アルバイトに高い売上を上げてもらう手立て、決算書の見方から、税務調査対策まで、歯科医院の経営を成功させるため実務に直結する具体的なアドバイスをお伝えします。 「コンビ二より激しい」といわれる歯科…

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