今回は、税務調査前に院長として準備しておきたいポイントを紹介します。※本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

帳簿の内容は何を聞かれてもいいように整理を

前回の続きです。税務調査の準備として確認しておきたいポイントを説明します。

 

②帳簿書類の整理

税務調査では、現金の流れを必ず調べます。歯科医院では、患者さんから受け取る保険診療の3割(または1割)の代金と、自由診療の代金を、毎日現金で受け取っています。


そうした現金の管理──たとえばどの帳簿にどのように記載しているか、小口現金の管理はどうなっているか、領収書の発行と管理はどうしているのか等、必ず質問・調査されるので、しっかりと整理しておきましょう。

 

預金に関しても事前に金融機関で調べていることがあります。記帳された内容について答えられるように、通帳に内容を書いておくようにしましょう。


患者からの未収金があった場合は、必ずその理由を説明しなければなりません。そのため日頃から、未収金が発生した場合はいつ、どんな理由だったのか、受付スタッフにメモを残してもらうようにしましょう。「たまたま持ち合わせなかったので、次回払うと患者さんに約束してもらっています」等、説明できる理由があることが大事です。


③金庫や机の中の整理整頓

事業に関係のない通帳や印鑑、書類などがあると、調査官に要らぬ誤解を与えてしまいます。医院の業務に関係がないものは、なるべく自宅などの別の場所に移しておきましょう。


④スタッフや家族、税理士との意思統一

ある意味、これが最も大事な準備です。税務調査では、最初にヒアリングが行われます。このとき、院長だけでなく院長の奥様や他のスタッフにも質問が向くことがあり、答えが統一されていなければ怪しまれます。

「疑念」があるからこその調査――曖昧な答えはNG

詳細は次回で述べますが、とくに経費として計上されている項目に関しては「事業としての支出ではなく、院長のプライベートな支出ではないか」という疑念を前提に話を振ってきます。「○○だったような気がする」等、不確かな記憶や想像で間違った答えを返すと、そこからどんどん不利な流れになっていきます。


何より大事なことは、税務調査が入らないように、普段から「怪しまれない申告」をすることです。


「昨年度と比べて異常に増えたり減ったりしている数字はないか?」「他の歯科医院と比べて異常な数値が出ている項目はないか?」この2つをしっかりとチェックしておきます。他の歯科医院の平均値については、税理士に尋ねたり、歯科医師仲間に確認をすれば、およそ把握できると思います。


もちろん、努力の結果として売上が大きく増えた場合は、堂々と申告をして、調査官に毅然とした態度で応じれば良いでしょう。しかし売上が増えていないのに、少しでも節税をしようと無理に経費を増やしたりすると、あとから面倒なことになります。


1万円の節税のために大きなストレスを抱え、弁明のために余計な時間を費やすよりも、売上を10万円上げる営業努力をして、自信を持って申告できるようにしましょう。

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    本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    中島 由雅,広瀬 元義

    あさ出版

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