本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

資金繰りの基本は、あくまで「入金>出金」

毎月の収入が90万円、経費が75万円、利益が15万円の歯科医院があります。2年がんばって360万円を貯めたので、院長はその資金で、300万円の医療機器を購入することにしました。現在使用している機器はだいぶ老朽化していて、その投資はその医院のコンセプトにも沿っているものです。

 

しかしそれを聞いた税理士に、止められてしまいました。なぜでしょう。

 

歯科医院であれ飲食店であれ、経営を安定させるためには、鉄則があります。毎月入ってくるお金の方が、毎月出て行くお金よりも多いこと。つまり、入金>出金です。当たり前のことのように思えるかもしれませんが、資金繰りが上手くいかず、経営が不安定になるほとんどの原因が、この法則を守れないことにあります。

 

その理由は、主に2つあります。

 

1つは、多くの院長が、預金通帳の残高を見てお金のある・なしを判断してしまうこと。もう1つは、歯科医院では実際のお金の流れと、会計上のお金の流れが異なることです。

 

たとえば、実際にお金を支払っていなくとも、減価償却費などは毎月経費に計上されています。逆に、借金の返済については、利息は計上されても借入元本の返済額は計上されません。

 

また、社会保険診療報酬の7割分のお金が医院に入ってくるのは2カ月後になるため、その月にたくさんの患者が来て「今月は収入が多い」と感じても、それを実感できるのは2カ月後なのです。さらに、2カ月前の患者数が少なかったら、その月に入るお金も少なくなります。

 

このように損益計算書と実際のお金の流れには大きなギャップがあること、そのためキャッシュフロー経営で現金の流れを掴む必要があることを、書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』CHAPTER2で説明しました。ただし、資金繰りの基本はあくまで入金>出金です。

手持ちの資金を減らさずに「必要な投資」をするには・・・

とはいえ、長く歯科医院を経営していれば、古い設備を新しくしたり、診療所の改修などが必要になってきたりします。そのとき、手持ちの資金を減らさずに投資をするためには、どうしたらいいのか。

 

銀行などから、必要なお金を調達するのです。たとえば300万円のお金を借りてくれば、入金が390万円(借入金300万円+収入90万円)、出金が375万円(設備300万円+経費75万円)となります。つまり、入金(390万円)>出金(375万円)これで、その月は黒字になります。

 

もちろん、借りたお金は毎月返済していきます。その際も、毎月の儲け15万円がゼロにならない範囲で返していきます。つねに、入金が出金を上回る状態。そして納税分・再投資分を貯蓄していくのです。これが維持できれば、医院の経営資金が枯渇することはありません。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

中島 由雅,広瀬 元義

あさ出版

新規開業の方法、アルバイトに高い売上を上げてもらう手立て、決算書の見方から、税務調査対策まで、歯科医院の経営を成功させるため実務に直結する具体的なアドバイスをお伝えします。 「コンビ二より激しい」といわれる歯科…

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