今回は、税務調査における調査員の着眼点を紹介します。※本連載は、中央税務会計事務所の税理士・中島由雅氏と、株式会社アックスコンサルティングの代表取締役・広瀬元義氏の共著『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』(あさ出版)の中から一部を抜粋し、歯科医院の節税、税務調査対策について解説します。

「贈与」は当事者同士の承諾がなければ成立しない

歯科医院の経営が安定し、それなりの利益が出るようになると、多くの院長は子どもにお金を残す準備を始めます。年間110万円以下の贈与は申告の必要がないため、子ども名義の通帳を作り、毎年110万円以下のお金を入れていくのです。

 

ここで注意しなければならないのは、贈与とは「贈る人」と「受け取る人」の両当事者の承諾がなければ、成立しないということです。

 

通帳の作成を親が行い、印鑑の管理も親が行っている。そのような状態では、客観的に見て、子どもは贈与されていることを確認できず、そのお金を自分のものとして使用することができません。つまり「子どもに対する贈与ではない」と判断されてしまいます。すると、その分のお金はすべて親の財産となり、相続税の対象とされます。相続税の調査でも、通帳はとくに気を付けておかなければなりません。

 

相続税の調査というと、税理士は不動産の評価や計算が適正かどうかを重視しますが、土地の調査は手間も時間もかかるため、国税調査官はあまり重視していません。

 

税務調査員が見ているのは、通帳です。たとえば500万円が入っている通帳を発見し、それが申告から漏れていたら、手っ取り早く「仕事」ができるからです。

税務調査員が「隠れ通帳」を見つけ出すポイント

では、税務調査員がどうやって「隠れ通帳」の存在に気づくのか。ヒントとなるものは、2つあります。

 

相続税の場合、院長の葬儀の際の芳名帳を確認されます。医院と取引をしていない金融機関からの参列があれば、隠れ通帳の可能性ありと判断されるのです。

 

もう1つは、カレンダーです。銀行がカレンダーを配るのは、それなりの預金をしている顧客だけです。医院が取引をしていない銀行のカレンダーが応接室やトイレにかかっていたら、調査員から質問されます。その場でうまくごまかせたとしても、銀行に調査が入ればすぐにバレてしまいます。

 

故意に所得を隠していた場合は自業自得ですが、贈与の定義を知らなかった場合、または故人の通帳の存在を知らなかった場合は、調査に入られる前に、素直に申告をしておきましょう。

本連載は、2015年7月1日刊行の書籍『これ1冊で安心 歯科医院経営のすべてがわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

これ1冊で安心 歯科医院経営の すべてがわかる本

中島 由雅,広瀬 元義

あさ出版

新規開業の方法、アルバイトに高い売上を上げてもらう手立て、決算書の見方から、税務調査対策まで、歯科医院の経営を成功させるため実務に直結する具体的なアドバイスをお伝えします。 「コンビ二より激しい」といわれる歯科…

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