銀行員「後見人を付けないと対応できません」は大ウソ。認知症高齢者600万人以上の今、伝えたいこと 

銀行員「後見人を付けないと対応できません」は大ウソ。認知症高齢者600万人以上の今、伝えたいこと 
(画像はイメージです/PIXTA)

成年後見制度の第一人者、宮内康二氏著書『成年後見制度の落とし穴』(青志社)より抜粋転載。本書では、後見制度の衝撃実例とともに具体的解決策をわかりやすく解説している。弁護士・福祉家の堀田力氏、経済評論家の山崎元氏も推薦する話題の一冊。

認知症高齢者は「後見を使うしかない」はウソ

介護に加え後見問題、このようなケースは非常に大変だと思いますが、下記の5点を通じ後見についてクリアーになって頂ければ幸いです。

 

1.成年後見制度は認知症の義務ではない

 

認知症だから成年後見制度を使わなければならないということはありません。もしそうなら、認知症高齢者の数である約600万人に後見人がついているはずですが、後見人がついている認知症高齢者は15万人程度しかいません。残りの585万人は後見なしでなんとかなっているのです。

 

認知症の程度が重いから後見制度ということでもありません。最重度の認知症でも、後見無しで、家族等のサポートを受け、お金を下ろし、施設に入っているからです。

 

したがって、どこの誰に、「後見を使うしかない」と言われても、「結構です」と断ってください。裁判所に出す用紙を渡されそうになったら、「要りません」と受け取らないでください。受け取ってしまうと「書けましたか?」と連絡がきて「できないなら自治体の方でやります」と後見の渦に巻き込まれ、市長申し立てにつながってしまうことがあるからです。

 

2.家族内のもめごとで後見制度を使うな

 

親のお金でもめ、後見制度を使ってしまう人がいますが、それは本来の使い方でありません。後見は本人がそう使うであろうようにそのお金を使う支援につき、周囲の嫉妬や思惑で本人のお金の使い道を制限すべきではないからです。嫉妬や怒りによる後見利用は必須、火(もめ事)に油(後見)となります。それで儲かるのは後見人や監督人だけです。どのみち家族内で裁判が勃発し、その長期化によるストレスが増長し、弁護士費用が高騰し、その分遺産が減るだけとなるのがおちです。

 

親のお金でもめた場合、もめている当事者同士で話し合ってください。当の本人、つまり、認知症等になってしまった老親を交えてもよいでしょうが、そこまでして本人のお金のことでもめるのはいかがなものでしょう。自分たちの感情や問題を、親の認知症を理由に変えて、成年後見制度を使うようなことはくれぐれも控えてください。後見を使わず、弁護士も使わず、当事者間の努力で解決をめざしてください。それが経験上最良の策と思います。

 

3.共通する対策は「任意後見を結ぶ+預貯金を別の財産に転換する」

 

任意後見を結んでおけば、誰かに法定後見を仕掛けられても待ったをかけることができます。自分で決めた後見がある場合、自治体や裁判所がでしゃばる法定後見は控えましょうという思想と運用があるからです。そのため、将来本当に使うためではなく法定後見をブロックするために任意後見契約を結んでおいたほうがいいかもしれません。

 

認知症や知的・精神障害等があって、お金(預貯金)があると後見制度の利用を勧められます。しかし、お金があっても「ない」と言いましょう。預貯金を、保険や不動産に付け替えたり生前贈与で減らしておくことで、「後見を使え」と言われたり勝手に後見開始の申し立てをされてしまうリスクを激減させることができます。

銀行員、老人ホームが話すウソに騙されるな

4.後見を回避するための銀行対策

 

銀行が嫌がるのは、「通帳やカードをなくしたので再発行してほしい」、「定期預金を解約したい」、認知症になった親の口座をめぐる家族内のもめごとに巻き込まれる、など自分たちの儲けにならないことに対応することです。いずれにせよ、預金者が認知症であるという情報をキャッチするなり、「後見人をつけないと対応できません」と言ってきます。本人が認知症とか障害があると言わず、カードや委任状を通じ本人のお金を下ろせばよいのです。

 

銀行は後見制度のことがわからないし、説明しても儲からないので、「後見取次サービス」という名目でリーガルサポートを紹介してきます。その結果、後見以外の遺言、信託、保険、不動産の話をされ面食らったという方もいます。預金者と何をしたかが司法書士により報告され銀行から金融商品の営業を受けたという実例もあります。銀行や司法書士の都合が優先され、高齢者にとっては面倒なことが多いので、銀行から後見取次サービスなどを提案されたら、「自分で考えます。自分で調べます」と断ることで、ストレスやコストを回避できます。

 

認知症や知的・精神障害があっても、本人が解約したいと言えるなら、その意思は認められるはずです。カードの再発行や遺産分割協議も同じことです。後見を使わないと対応できないというのは銀行の屁理屈もしくは不履行に過ぎませんので、銀行の上司を呼ぶ、本社・消費生活センター・銀行協会・金融庁に苦情を入れてみてください。そうすることで、後見なしであっさり対応してくれることも少なくありません。そもそも後見は必須ではないことがわかるでしょう。

 

5.後見を回避するための老人ホーム対策

 

老人ホームが気にするのは、費用の支払い、遺体の引き取り、提供する介護サービスの内容確認、の3点です。費用の支払いは、本人にお金があって任意後見をしておくことで解決できます。遺体の引き取りや遺品整理は、本人が誰かと死後事務委任契約を結んでおくことで懸念が解消されます。介護サービスの内容確認は本人でも家族でもできます。つまり、身寄りがなくて、極めて重度の認知症でなければ、老人ホームに入るために法定後見は必要ありません。

 

後見がないと受け付けないという施設には入らない方がよいと思います。そのような施設は、後見を生業にする弁護士など士業との関係が濃いからです。施設と組む士業は、入居者の相続や自宅売却を狙っていることが多く、後見を通じていろいろ介入されてしまいかねません。施設に言われて後見を使ったことで、どこかの施設に消えてしまった、死に目に会えなくなったなどの惨状が実際あるのですから、後見を求める施設とは縁がなかったと思った方が身のためだと思います。


 

本連載は、2022年7月8日発売の書籍『成年後見制度の落とし穴』(青志社)から抜粋したものです。その後の制度改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

成年後見制度の落とし穴

成年後見制度の落とし穴

宮内 康二

青志社

「弁護士、司法書士などの後見人と、家庭裁判所などの行政へ! 現状の改善と向上に向け告発する! 」 いま社会問題となっている成年後見制度について、衝撃実例と実用集をあげてわかりやすく解説。自分の老後と親亡きあとの気が…

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