家賃を下げずに満室経営を維持することはできるのでしょうか? 本連載では、不動産投資で長期安定収益を得る「13のテクニック」を紹介します。

入居者が退去した際の損失は「約5か月分の家賃相当」!?

物件の競争力をつけて満室経営を実現できたとしても、それで満足してはいけません。なぜなら、満室でも「空室」は存在するからです。

 

賃貸マンション経営で長期にわたり安定収益を出すためには、満室時の空室率を想定しなければなりません。現時点では満室稼働していても、いずれ入居者が退去するタイミングは必ず訪れます。

 

退去後、すぐ次の入居者に貸すことができたとしても、機会損失は少なからず発生します。前入居者の解約日、リフォーム期間、新しい入居者の入居日(家賃発生日)によって機会損失額は変わりますが、数日で次の入居を完了させるのは現実的ではありません。

 

たとえば平均入居期間が3.5年(42か月)の物件があり、新しい入居者に入れ替わる期間は1か月とします。この場合の空室率は、1÷42=2.4%となります。ただしこの数値は、入居者をすぐ見つけることができた場合の数値です。

 

実際には空室は2か月以上続くことが多いですから、入居者募集に2か月要したと仮定した場合の空室率は2÷42=4.8%。このほうがより現実的な数値といえるでしょう。賃貸借期間10年といった特殊な契約でもない限り、たとえ満室稼働中であっても空室率5%は必ず見込んでおく必要があります。

 

キャッシュフロー経営においては、空室率とともに「入居者回転率」も重要です。回転率とは、どの程度の頻度で退去が発生しているのかを表す指標です。平均入居期間が短い物件ほど回転率は高く、平均入居期間が長い物件ほど回転率は低くなります。当然、回転率が高いほど入居者の入れ替わりが激しく、空室損失が多く発生し、オーナーの収益が低下していることを意味しています。

 

平均入居期間が2年程度の物件は、回転率は比較的高いといえます。この場合、家賃1か月分のロスは1÷24で空室率4.2%分に相当します。

 

しかし実際には、1部屋退去した際の空室損失は約5か月分の家賃といわれています。空室が決まるまでの期間が約2か月、リフォーム費用が約1か月分、仲介会社に支払う広告料が約2か月分、合計5か月分です。

 

この5か月分の損失を、平均入居期間2年という条件に当てはめて計算すると、5÷24で約20.8%。入居者が平均2年で退去する物件は、空室率が20%程度に跳ね上がるということです。満室稼働だからといって安心してはいけない理由がおわかりいただけたでしょう。

「適正家賃」を維持した満室経営でなければ意味がない

自社ウェブサイトなどで満室経営を謳う管理会社をよく見かけます。しかし、満室経営にも「質」があるのを理解しておかなければなりません。

 

たとえば無理やり家賃を下げて空室を埋めても満室経営です。空室はないかもしれませんが、家賃収入が激減し、物件価値を大きく損ねています。それではオーナーの立場に立った本当の満室経営とはとてもいえません。

 

平均入居期間が極端に短い物件も、同じく満室経営とは程遠い状況です。先ほど見たように平均入居期間2年の物件は、満室時の空室率は20%程度まで跳ね上がるわけですから、やはり満室経営とはいえないでしょう。

 

本当の意味での満室経営とは適正家賃を保ち、平均入居期間を可能な限り延ばしていく先にようやく見えてくるものなのです。満室経営という甘い言葉に惑わされてはいけません。

本連載は、2015年12月10日刊行の書籍『入居希望者が殺到する驚異の0円賃貸スキーム』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

入居希望者が殺到する 驚異の0円賃貸スキーム

池田 建学

幻冬舎メディアコンサルティング

大家が抱える最も悩ましいリスクは空室だが、これまで賃貸不動産で客付けをしようと思えば、「家賃を下げる」「リノベーションなどをして付加価値をつける」「広告料を仲介会社に多く払う」方法しかありませんでした。 にもか…

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