交渉相手の隣地の所有者が「所在不明」…どうしたら?
所有地に家を建てたい、あるいは所有地を売却したい、それらを実現するために境界確定したいが、隣地や隣地の道路の所有者が所在不明なため、サッパリことが進まない…といったケースが、近年増加しています。
土地の所有者が不明となる原因は、大きく3つに分かれます。
①所有者が行方不明で所在を確認できない、いなくなってしまっている場合。
②もとの所有者が亡くなったが、相続人がおらず、国のものになっている場合。
③もとは法人が所有していたものの、法人が破産、解散している場合。
境界が確定できていない土地で、上記のような事態が発生すると、自宅建築や土地売却を考えている隣地の所有者は、境界がわからないために足止めを食らってしまいます。また、接道のない土地の所有者が、接道のある隣の空き地を一部あるは全部買い取って、瑕疵のない土地として売却したいと思っても、なかなか思いを実現できません。
必死になって土地所有者を探しても、持ち主がいない、持ち主であった法人がすでに解散している…となると、個人での解決は非常に困難です。
八方ふさがりに思える状況ですが、じつは弁護士を挟むと、問題解決は容易です。
裁判所へ依頼して代理人を立て、その代理人と交渉
どのような手順で解決するのか、説明していきましょう。
まず、弁護士が裁判所に依頼し、所有者不明の土地に中立的な代理人を立てます。その後、代理人に境界確定へ立ち会ってもらい、分筆登記の書類を書いてもらったうえで、抵当権抹消書類を書いてもらいます。そうすることで、「未確定」だった土地にスッキリと境界が設定できるのです。
複数の手続きがあり、弁護士を挟むことから、高額な費用が発生するのでは…と思われるかもしれませんが、中立的な代理人の費用、その他手続きの費用を含め、100万円~200万円ほどの費用で解決が図れます。
地方など、土地価格が500万円から1000万円程度の場合には、単価が合わない金額かもしれません。
しかし、境界確定ができていないがために、不動産屋から土地の買取りを断られるケース、せっかく買い取ってもらえても〈訳アリの土地〉として評価額が下がってしまうケースも少なくありません。
一都三県など、3000万円、5000万円といった価格がつく土地の場合、100万円から200万円で問題が解決するのであれば、問題を解決し、瑕疵のない綺麗な土地として売りに出したほうが、土地の評価も上がり、かかった費用より大きくプラスになることも十分あり得ます。
解決までの期間はおよそ半年程度ですが、書類収集等がスムーズなら、3ヵ月から4ヵ月ほどですむ場合もあります。
半年ほどの期間では不動産の価値が大きく変動する可能性も低いので、ぜひ問題を解決してからの不動産売却をおすすめします。
抵当権を外したいが、該当の企業が破産しているとき
不動産に抵当権がついていて、抵当を外したいが、該当の企業がすでにないといったケースも、同様の方法で解決できます。
多くの場合、抵当をつけているのは金融機関であり、銀行の統廃合があっても、銀行そのものがなくなってしまうケースはありません。しかし一昔前には、一定数ではありますが、消費者金融等も不動産に抵当権を付けていたケースがあります。
抵当権を付けていた消費者金融が破産していたりする場合も、抵当権を外すために、土地の境界画定同様、裁判所を活用します。
手順の流れも同様で、裁判所で訴えを提起して代理人を立ててもらい、代理人相手に勝訴判決をとり、その判決をもとに抵当権を抹消するのです。
これらの訴訟手続きは、基本的に〈相手のいない戦い〉であり、不戦勝のかたちで裁判が決着していくケースが多くなっています。
少子高齢化による空き家問題と同様、隣地の所有者不明により、売るに売れない土地を抱えている方は多いと思われます。
活用できない土地への対処に苦慮している方は、弁護士を活用して価値を高め、資産形成の一助にしてはいかがでしょうか。
山村法律事務所
代表弁護士 山村暢彦