(※写真はイメージです/PIXTA)

資産形成を目的に、投資家デビューする人が増えています。しかし一部には、株価が割安なのか割高なのかといった、基本的な判断基準の知識を持たないまま、イメージや勢いで売買するという恐るべき投資家もいるようです。最低限知っておきたい株価の評価指標「PBR」について、経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

なぜPBR(株価純資産倍率)は1倍が出発点なのか?

株価が割高なのか割安なのかを考える際に最もよく使われるのは「PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)」ですが、それと並んで重要なのは「PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)」と呼ばれるものです。

 

これは、株価が1株あたり純資産の何倍で取引されているか、という倍率を示したものです。1倍ならば、1株あたり純資産と株価が等しい、というわけですね。

 

会社が解散する時には、資産を売却・負債を返済して残った資金を株主が山分けするわけですが、残る資金の額を示すのが純資産(バランスシートの右下部分)なのです。

 

つまり、株価は会社の解散価値に等しいはずだ、と考えると、株価は1株あたり純資産と等しくなるべきで、PBRは1倍になるべきなのです。そこを出発点とした上で、1倍以上になるべき要因や1倍以下になるべき要因について考えていこう、というのがPBRの考え方なのです。

「PBRが1倍以下」に、投資チャンスが潜んでいる

もちろん、会社が解散する時に資産が帳簿通りの価格で売れることは無さそうです。たとえば会社の看板は、製作費用で決算書に計上されますが、会社が解散する際に売却しようと思っても買い手は見つからないでしょうから。

 

ただ、会社が存続し続けるならば、製作費用を上回る利益を会社にもたらしてくれるかもしれません。少なくとも会社が看板の制作を決定した時は、それを期待していたはずです。

 

そして、実際にそうなっているならば、会社が将来も看板を使って利益を稼ぎ続けると期待できますから、株式市場は看板の「価値」を制作費用以上と見積もるはずなのです。

 

つまり、PBRが1倍以下だということは、会社の資産が帳簿価格以下の価値しか無い、と株式市場が判断しているわけですから、本当にそうなのか否かを考えてみる価値はありそうです。

 

あるいは、いまの資産の状況には問題がなくても、会社の稼ぐ力が弱くて今後の決算は赤字が続くと予想している場合には、PBRは1倍以下となるでしょう。赤字が続けば将来の純資産がいまより少なくなるわけですから。しかしこれも、本当にそうなのかを考えてみる価値はありそうです。

 

そのうえで、そこまで悲観的に考える必要はなさそうだと思えるなら、株価が過小評価されている可能性が高いので、投資を前向きに検討してみればいいでしょう。

PBRが「会社ごとに大きく異なる」ワケ

資産が有効活用できていない、あるいは将来の収益に疑念がある、といった話はこれくらいにして、優良企業同士を比較してもPBRは会社ごとに大きく異なる、という話をしましょう。

 

たとえば塚崎経済研究所という会社がパソコン1台だけの資産で原稿料を稼いでいるとすれば、利益額と比べた1株あたり純資産額は非常に小さくなり、したがってPBRは非常に大きくなるかもしれません。

 

一方で、たとえば不動産賃貸業は、巨額の費用をかけて不動産を取得して、それを賃貸して利益を稼いでいるわけですから、利益額と比べて保有資産額は大きくなります。その結果、1株あたり純資産は大きく、それに対する株価はそれほど高くならないでしょう。

 

なお、同じ不動産賃貸企業でも、資産取得費用の大部分を借金で賄っているという場合には、1株あたり自己資本が小さく、PBRが大きくなる場合もあるので、会社の本業の性質のみならず、借金と自己資本の比率などもPBRに大きく影響することになります。

PBRは、大不況時等の「不測の事態」の影響は軽微

PERについては、大不況が来て企業の利益がマイナスになれば計算できなくなってしまいますし、企業の利益が非常に小さなプラスの場合にはPERが異常に大きな数字になったりする場合があります。

 

そうした場合には「現在の株価を過去数年間の1株あたり利益の平均と比べる」といった工夫が必要になるわけですね。

 

しかし、PBRの場合には、そうした問題は軽微です。1株あたり純資産は過去からの出資と内部留保の蓄積なので、今期が赤字になってもそれほど大きな影響は受けないのが普通だからです。

 

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