「顔つきが変わった」と言われる
■収入は減っても、お金に換えられない喜びがたくさんある
これまで長く携わってきた広報の仕事は直接売上に結び付く仕事ではありませんでしたが、今は自分の仕事の結果がはっきりと数字に出ます。顧客との距離も近く、そこに面白さを感じているといいます。
ただ、「仕事をするうえでのカルチャーショックもあった」と打ち明けてくれました。
「東京にいたときは、周りのみんなが『結果を出して、もっと自分をアピールして、もっとお金を稼ぎたい!』という感じでギラギラしていました。一方、こちらは皆さん真面目ですが、ややのんびりした印象です。
今後、会社がさらに成長していくために、私の経験や視点を活かして組織を改善できる部分があれば取り組んでいきたいと考えています。簡単ではないかもしれませんが、上司であるCOOも私と同じ課題感を共有しているので、相談に乗ってもらっています。理解者がいるのはとても心強いです」
Eさんは今実家で両親と暮らしていて、通勤時間は車で1時間ほどです。東京のような満員電車での1時間はつらいですが、車なのであまり苦にはなっていない様子です。
ただ、朝はとても早くなったといいます。会社の始業時間が8時半と、以前の会社の9時や10時半出勤より早いこともありますが、フレックスが使えるようになり、オフピーク通勤で8時には出社するようになったからです。
「今は朝5時半には起き出して準備をしています。その分、寝るのも早くなりました。ただ、生活自体はとても楽になりましたね。仕事から帰れば母が料理を作ってくれていますし、本当に楽です。休日は家族と過ごせるようになりました。母とご飯を食べに行ったり、妹家族の家で3歳の甥っ子や1歳の姪っ子と遊んだりして楽しく過ごしています」
収入面の満足度についても聞きました。
「正直、お給料は減ったので、以前は欲しいものがあればすぐに買っていたのですが、ガマンすることを覚えました(笑)。とはいえ、収入が下がるのは覚悟していましたし、贅沢な暮らしがしたくて転職したわけではありません。家族との時間など、お金と引き換えに得られるものが多くあったので今の生活には満足しています」
転職して家族と一緒にいられることがなによりうれしいと話すEさんは、今はお母さんと気軽に出かけられ、お父さんとは仕事の話もできるようになったといいます。東京時代の友人には、「顔つきが変わった」と言われるそうです。
東京で感じていた疲弊感もなくなり、ストレスがあると食べ過ぎてしまっていた習慣も、今はなくなり、健康的になりました。「仕事でも新しいチャレンジを楽しめているので、本当に転職してよかったと思っています」とのことです。
自身の転職経験を振り返っての感想を聞くと、「Uターン転職しようか迷っているより、後悔しないように行動してよかった」と話してくれました。Uターンしたら今とは全然違う仕事をすると覚悟していたから余計に、いい意味で裏切られたといいます。
「富山で女性が活躍できる会社と出合えたのは嬉しい誤算でしたね。東京は、今から自分を鍛えないといけない若い人にとってはお勧めの場所です。しかし、年齢を重ねたあとは、地方に目を向けるのもいいと思います。東京で得た経験やスキルを還元できる場所が地方には意外とたくさんありますし、新しいことにもチャレンジできます」
東京にはプロフェッショナルがたくさんいてしのぎを削っているので、新しい分野にチャレンジすることがなかなかできないこともありますが、地方では違います。
Eさんも、「東京にいたら今のECマーケティングやデジタルマーケティングのような仕事はさせてもらえなかったと思います。詳しい人がほかにたくさんいますから。今の会社に来たからこそ、そのチャンスをつかめました」と語ります。
地方にもやりがいのある仕事はたくさんありますし、新しいことにチャレンジできるチャンスも、むしろ地方のほうがあると思います。ここで紹介した人以外にもサクセスストーリーはたくさんあります。
人生は一度きりです。人生の新しい扉を開くのは、あなたの意思決定一つです。
江口 勝彦
株式会社エンリージョン 代表取締役
キャリアコンサルタント