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相続をめぐるトラブルがこじれたり、もともと家族どうしの仲が悪く疎遠であったりすると、相続人であるにもかかわらず連絡を拒否して話し合いに応じない人もいます。連絡を拒否して手続きに非協力的な相続人がいる場合の対処法についてみていきます。

連絡拒否が続くとさまざまな問題が起こる

連絡を拒否する相続人がいて相続手続きができない場合でも、そのまま放置しておくことはできません。相続手続きをしなければ、さまざまな問題が起こります。連絡拒否が続いて相続手続きができない場合にどのような問題が起こるか、4つの事項をご紹介します。

 

3ヵ月経過後は相続放棄ができなくなる

相続放棄をする場合は、原則として故人の死亡から3ヵ月以内に家庭裁判所で手続きをしなければなりません。期限を過ぎると相続放棄ができなくなってしまいます。

 

もし、故人に借金があって相続放棄をする必要がある場合は、連絡を拒否している相続人にもそのことを伝えておく必要があります。

 

なお、相続放棄は各相続人が個別に手続きをすることができ、連絡を拒否する相続人がいたとしても他の相続人の手続きが止まるわけではありません。

 

預金が引き出せない

故人の名義の預金は、金融機関に死亡を届け出た時点から入出金ができなくなります。これは、相続人による不正な引出しや遺産の横領を防ぐために行われるものです。

 

故人の預金を引き出すためには、遺産分割協議が成立しているか、少なくとも預金を引き出すことについて相続人全員で合意していることが必要です。相続人に連絡を拒否されて話し合いができなければ、故人の預金を引き出すことはできません。

 

なお、2019年7月1日から遺産分割前の相続預金の払戻し制度が施行され、相続人が単独で故人の預金を一部引き出すことができるようになりました。しかし、全額を引き出すことはできません。

 

不動産を売却できない

不動産をはじめ故人の名義の財産は、遺産分割協議で分割されるまで相続人全員の共有になります。

 

共有物を売却する場合は共有者全員の同意が必要で、相続人に連絡を拒否されて話し合いができなければ、不動産を売却することはできません。売却だけでなく、建て替えや増改築、賃貸などを行うときも同様です。

 

相続税申告で不利になる

相続税の申告が必要であれば、10ヵ月以内に手続きが必要です。相続人の連絡拒否が続いて申告期限までに遺産分割協議ができない場合は、一度法定相続分で遺産分割したことにして相続税を申告します。後日、遺産分割協議ができたときに、正しい税額で申告しなおします。

 

この場合は、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など相続税の節税になる特例が受けられません。一部の特例については、所定の手続きをすることで適用を3年間延長することができます。

 

しかし、一度は特例を受ける前の高い税額で相続税を納めなければなりません。相続税が増えるという不利益は、連絡拒否をしている相続人だけでなく相続人全員に影響します。遺産の額が多いと税負担も大きいため、できるだけ早く相続人の全員が納得できるように遺産分割協議を成立させることが重要です。

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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