急成長企業の場合、PERが「極めて高い」場合も…
もっとも、他社と比較して「PERが高いから割高」「PERが低いから割安」などというのは危険です。たとえば、急成長企業はPERが非常に高い場合が多いからです。
普通の企業は、いまの株価が100円で一株あたり利益が7円というのが普通ですが、急成長企業の場合はそうとは限りません。たとえば10年後に利益が100倍になっているかもしれないとすると、いまの利益が7円でも株価は10,000円が妥当かもしれません。まあ実際には、急成長企業は途中で倒産する可能性もあるので、10,000円で買う人はいないでしょうが…。
「過去の自社のPER」との比較が重要なワケ
他社と比較するより、過去の自社と比較するほうが容易です。過去に比べて企業の規模が3倍になり、利益も3倍になったのに株価が2倍にしかなっていなければ、PERが下がります。そういうときには割安だと考えてよかろう、というわけですね。
もっともこの場合も「かつては成長企業だったが、最近は成長が難しくなりつつあり、衰退企業になるかもしれない」というのであればPERが下がるのは当然で、利益が3倍になっても妥当な株価は以前より安い、という場合もあるため要注意です。
大不況のときには、PERは使えない
リーマン・ショックのような大不況のときには、PERは使えないので要注意です。「今期の利益がほぼゼロならば株価もほぼゼロが正しい」というようなことはないからです。
今期はリーマン・ショックのせいで利益がほぼゼロだけれども、来年以降はマトモな利益が期待できる、という場合には、来年以降に予想されるマトモな利益を用いてPERを計算して割安割高を判断すべきなのです。
実際には、来年以降の利益を予想するのは難しいので、リーマン・ショック前の利益の数字を使います。人によっては、「過去10年の利益の平均」を使ってPERを計算して割高割安の判断をしているようですね。
適正水準の議論は、短期投資には不向き
PER等を使って株価が割安であると判断されたとしても、短期投資の場合には「割安だから買おう」と考えるのは危険です。
株価は時としてオーバーシュートしますから、売られ過ぎて割安な水準になったのに、さらに売られ続けて値下がりする、といったことが起きかねないからです。そのあたりについては、拙稿『【株価暴落の恐怖】周到な投機家・呆然の投資初心者…過酷な状況を乗り切る方法は?』を併せてご覧いただければ幸いです。
本稿は以上ですが、投資は自己責任でお願いします。なお、本稿は筆者の個人的見解です。また、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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