外国の金融機関を利用した脱税を予防する目的で、国内外の税務当局間で共通報告基準(CRS)に従って「非居住者」の金融口座情報を自動的に交換する制度が、2018年よりスタートしました。スイス、シンガポールといった「鉄壁の守秘性」が売りだったプライベートバンクはその影響をもろに受け、従来の資産防衛の手段が消滅。富裕層が富裕層でいるための資産防衛には、どういった留意点があるのでしょうか。

天災という「ジャパンリスク」を回避するには

日本列島は地震が多発するプレートの淵上に存在しています。これはプレートの中心よりも地震が多いことを意味します。加えて、地震だけではなく火山の噴火も想定しなければなりません。もっとも、地震だけであれば日本の実力からすれば復旧は可能です。日本人は常に天災と向き合って生活をしてきました。

 

世界を代表する日本の芸術家、江戸の浮世絵師・葛飾北斎の作品にも江戸時代に起きた宝永大震災、宝永大噴火が描かれていますが、いまの東京にあたる江戸においても、その後の関東大震災も含め、大地震や富士山噴火等の災害が起きたことが記録されています。東京、そして日本は、これらの大きな災害を乗り越えて繁栄を続けてきたのです。

 

出所:スミソニアン協会図書館
葛飾北斎「宝永山出現」 出所:スミソニアン協会図書館

 

しかし、いまの日本には問題があります。国内に原発という爆弾を抱えている点です。

 

現在、日本には33基の商業用原子力発電所があり、9基が運転中です。また、福島原発は放射性物質のメルトダウンが起きており、再度の大地震などにより大きな力が加わった場合の危険性は、容易に想像できます。

 

出所:電気事業連合会HP
日本の原子力発電所出所:電気事業連合会HP

 

また、富士山などの大噴火による火山灰の影響は首都圏で長期間に及び、電源喪失や飛行機の発着不能などの甚大な被害が想定されます。

 

出所:政府広報オンラインHPより
日本の活化然・常時観測火山出所:政府広報オンラインHPより

 

火山灰が広範囲に降り注いだ場合の影響は、想定上に大きいと考えられています。遠く離れた東京でも数センチの降灰が予測されます。空中にも火山灰が浮遊し、呼吸器をはじめとする健康被害、機械類のエンジン稼働にも大きな問題を起こすといわれ、さらには降雨による電線の漏電も誘発します。電源等が喪失すれば、数日間にわたって経済活動が停止する可能性も十分考えられ、数兆円の損害が出るとも試算されています。

 

これら自然災害は日本に住む以上避けられない特有のリスクです。

 

※ 降灰地域は噴火の推移(噴出率/噴煙柱の高さ)・風向風速によって変わる。計算結果はケーススタディのための一例である。 出所:内閣府防災情報のページ
富士山噴火で想定される火山灰堆積厚(宝永噴火に近いケース) ※ 降灰地域は噴火の推移(噴出率/噴煙柱の高さ)・風向風速によって変わる。計算結果はケーススタディのための一例である。
出所:内閣府防災情報のページ

国内不動産投資への偏りも、大きなリスクになり得る

昨今、国内において不動産賃貸業、管理業を運営する読者も増えていると思います。このように、物件を保有している地域にもよりますが、すべての資産をすべて国内に集中して保有することは、やはりリスクが高いと言えます。

 

仮に、保有している物件が関東より東の本州に集中していた場合、万が一福島原発が倒壊して放射線が拡散することになれば、東京を含む東日本が壊滅的なダメージを受けることになります。

 

このように、国内不動産の賃貸業を営んでいる場合でも、日本国外にそれなりの規模の資産を保有して、リスクの分散を図るべきと考えられます。

 

さらには、2022年5月時点で都内において600棟を超えたタワーマンションですが、世界を見渡しプレートがぶつかっている地震多発地域に、東京のように高層物件が集積している都市はおそらく存在しないでしょう。施工業者は地震の規模を独自に想定して大きな問題はない、といっていますが、想定外のことが起こるのが天災の常です。これは東日本大震災の教訓を思い出せばよくわかることなのです。

 

テクノロジーには不可能なことを可能にしてきた功績はありますが、その一方で、テクノロジーを過信・依存し過ぎるのは、あまりに安易で無責任なことではないでしょうか。

 

江戸時代以降、日本人はいくつかの大きな時代の転換点にも臨機応変に対応できたことが、いまの繁栄の理由のひとつであるといえます。しかし、近年の急激な変化がもたらした「大きな価値観のシフト」に追いつけず、考えることを放棄してしまい、漠然と日常をやり過ごしている人も――筆者自身への自戒も込めて言いますが――多いのです。

 

次回以降は、上述の「天災」以外のリスクについて、詳細に検証していきます。

 

 

遠坂 淳一

株式会社 ジェイ・ケイ・ウィルトン・インベストメンツ 代表取締役

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