(※写真はイメージです/PIXTA)

かつては富裕層の相続対策のため、大いに活用された「生命保険」ですが、近年では、日本円が力を失うのと同時にその魅力が色褪せ、ついには「保険不要論」まで広まる状況となっています。しかし一方で、「米ドル建て」の商品に目を向けてみると、また違った見方や判断ができるかもしれません。資産防衛のプロであるウエルスマネージャーが解説します。

生命保険は、相続対策・リスク管理に適した金融商品

生命保険は、統計上の死亡確率や平均余命等の数値を基に設計され、「満期」時の金額が決まる「運用商品」としての評価も可能です。契約をしてすぐに「満期」になれば、その内部収益率(IRR)は非常に高いものとなり、逆に「満期」までの時間が長くなればIRRは下がっていきます。「想定外の事態」に高いIRRが期待できる、という性質を持っているからこそ、相続対策やリスク管理に適した金融商品であると言えます。

 

また生命保険では通常、契約時に死亡保障額を確定できます。一般的な資産運用の場合は、常に市場も動いているため、不慮の事態に備えるには不確定要素が大きく、不安材料も多くなります。この点、保険契約をしていれば、通常契約中はどんなタイミングであっても当初の保障額が約束されます。加入年齢が若ければ、支払った保険料の10倍以上の保障が確約される場合もあります。

 

不慮の事態が起きれば資産にレバレッジがかかる点が、生命保険のメリットのひとつです。その最たるものである「逝去」時にレバレッジがかかれば、相続税を支払っても総資産が目減りするどころか、税引き後でも資産が増大することになります。

 

もちろん支払方法や期間、保険金額、年齢や家族構成等、それぞれ環境や財政事情も含めて様々に異なるでしょうからすべての読者に生命保険が必要であると断言できません。

「証券会社」「銀行」「生命保険会社」の構造の違い

証券会社や運用会社では、顧客の資産は分別管理されており、会社の資産とは完全に切り離された仕組みになっています。

 

銀行においては、預金は銀行にとっては負債であり、バランスシートにしっかりと組み込まれることになります。そして、銀行は当局によって運用先や自己資本の額などが厳格に規制されます。

 

一方、生命保険会社は、この証券・運用会社と銀行の両方の側面を持っています。顧客の資産を分別管理して運用をしている部分と、自社の資産として運用をしている部分という二側面を持っています。分別管理をして運用されるのは主には変額保険ですが、通常の保険契約の資金は、一般勘定の扱いで生命保険会社の資産として運用されることになっています。

 

また、証券・運用会社では、会社の資産を使っての元本の保証・損失補填などは一切認められていません。銀行預金の元本は、原則銀行が保証をしています。

生命保険会社の「優位点と特異性」

それでは、生命保険はどうなのでしょうか。実はこれらが認められているのです。

 

銀行のように預金業務をおこなうわけにはいきませんが、保険機能の付与によって運用利回りや解約返戻金、保険金の額を保証することが可能なのです。

 

保険会社の「一般勘定」という、非常に大きな枠内で運用をするわけですから、仮に一部の契約の運用でうまくいっていなくとも、全体から付け替えが可能であり、契約者と約束した金額・予定利率を実現できるのです。保険会社側から見れば、運用収益と契約者からの保険金や返戻金などと予定利率、諸経費を勘案してやり繰りをする必要がある、ということになります。

 

高い金利があった時期には、元本と利回り保証があったからこそ、生命保険が好まれたという事情も留意しておくとよいと思います。

生命保険を価格変動の低い「運用商品」として捉える

保険は不慮の事態に備えるためのものです。そして、現代の生命保険は「資産運用」としての機能も色濃くなっています。日本円で資産を長期間にわたり安定的に、かつそれなりの利回りで運用することは、もはや不可能です。生命保険会社の預かる金額数億円、数百億円の規模ではなく、数兆円、数十兆円ですから尚更です。その意味で言えば、現状「円建ての生命保険」は本来の目的は果たしにくくなっているのです。

 

ちなみに、医療保険、がん保険、所得補償保険、その他の保険は基本的には日本円で契約するべきものと考えられます。しかし、生命保険のように長い期間契約を継続することが想定され、かつ、大きな保障が必要となる保険では、現在の円での運用環境ではその役割を果たすのは難しくなっているというのが現実ではないでしょうか。こういった観点で、商品を見極める目線も必要なのです。

「米ドル建て生命保険」という選択肢

このように、大まかな仕組みを理解すると、生命保険に興味がわいてくるかもしれません。そして生命保険会社に支払保険料、換言すれば「満期が早まった場合の高い利回りを約束するための費用」が無駄なものなのか、元本や利率を保証できる保険契約が自身や家族、関係者にはメリットがないのか等、客観的に判断する必要があります。いずれにせよ、生命保険会社において重要な業務のひとつは「資産運用」です。また、契約の解約や償還にスムーズに対処するには、預かっている資金の大きさも影響してきます。

 

現状の金利や成長性の低さを鑑みると、日本円の生命保険は本来のメリットを出せない可能性があり、それに気が付くことができれば、何を選べばよいかも必然的にわかってくるはずです。またそれぞれの通貨のおかれた運用環境が生命保険の条件や商品性にもろに影響することを理解すべきでしょう。

 

つまりは外貨、とくに米ドルでの生命保険を選ぶ、という選択肢がクローズアップされるのです。とくに米ドルの金利が高めに推移している現在の市場環境では、格段にそのメリットが大きくなります。

 

日本円での環境に慣れてしまっているゆえに「生命保険無用論」という声が上がるのは無理もない面があります。しかし、米ドルの世界では事情が大きく異なります。富裕層や資産家にとっては、相続対策やリスク管理として生命保険は欠かせないツールとなっています。

 

 

遠坂 淳一
株式会社 ジェイ・ケイ・ウィルトン・インベストメンツ 代表取締役

 

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