今回は、ベトナムで2015年に発布された新住宅法の「施行後の動き」を紹介します。※本連載は、I‐GLOCALグループ代表・蕪木優典氏と、弁護士・工藤拓人氏、實原享之氏、グェン・チュン・チャン氏による共著書籍、『これからのベトナムビジネス』(東方通信社)の中から一部を抜粋し、ベトナムの不動産市場の現状と最新のトレンドを紹介します。

新住宅法の施行によって、多くの外国人が物件を購入

新住宅法が発布されたのは2015年のことで、同年7月1日から施行された。新法の要はもちろん、外国企業・個人の物件所有などの大幅な規制緩和だ。その背景には、ベトナム新築物件があまり売れていないという現状を打開するために、外国人にどんどん買ってもらおうという狙いがある。

 

法律はできたが、ベトナムでよくあるように、具体的な運用が固まっていないところにリスクがある。ただ、「外国人に売りたい」というところから発した規制緩和なので、外国人による売り買いを、今以上に制限するということにはならないと思われる。

 

だが、現状でも買っている人はもちろんいる。住宅販売の状況については、報道ベースで、すでに昨年の上半期、外国人がまだ自由に購入できない状況の時点で去年の3倍に伸びているとのこと。

 

その理由は、マステリやビンホームズなどのベトナム富裕層にとってもかなり魅力的な物件が動いていることにあるようだ。それに外国人で、7月にならないと本契約できないにもかかわらず、デポジットを入れてあらかじめ物件を押さえにかかった方もかなりいたようだ。

 

施行後の7月以降の状況は、業者側の動きとしては、日系は足並みがまちまちで大手ほど動いていないところが多く、各社様子見の状況といったところだ。

 

対してすでに多くの外国人は購入に向かっており、権利書、いわゆるピンクブックなどの申請に移っている方も多いようだ。報道ベースでは7月24日、施行からまだ3週間しかたっていない時点で、ひとつの仲介会社だけで110戸くらい外国人に売った、というニュースが出ていたほどだ。

 

日系でもっとも多く売っている物件としては、べカメックス東急のビンズン省のソラガーデンだ。

一般人にとって「住宅購入」のハードルはまだ高いが…

ところで、ベトナム人の住宅購入の現状としては、一人当たりGDPが2300ドル程度なので、一般人にはハードルが高いのが現状だ。

 

中国では一気に不動産バブルが発生した時期があったが、それは「家を持たないと結婚できない」という独特の文化・風習があったからであるように思える。それによって両親とさらに祖父母が全員でお金を出して孫に物件を買うため、上海市内などに1億円を超える2LDKが急増したのだろう。

 

IMSの一人当たりGDPの情報によると、2007〜09年に中国では個人GDPが2000ドルから4000ドルに跳ね上がり、同時期に物件価格も倍増したが、ベトナムの場合はいま2170ドルで、今後5年くらいかけて緩やかに4000ドル程度まで上昇していくとみられる。

 

一般的にいって、一人当たりGDPが3000ドルくらいになると幅広い層での住宅購入が増加するので、ベトナムでもこの5年くらいで一般人による住宅購入も活発になるのではないだろうか。現状では、ベトナムの住宅ローンは軒並み利息10%程度と高利だが、徐々に金利も落ち着いてくると思う。

これからのベトナムビジネス

これからのベトナムビジネス

蕪木 優典・工藤 拓人・實原 享之・チャン・グェン・チュン

東方通信社

ベトナムはドイモイ政策、世界貿易機関(WTO)への加盟を経て、着実に経済成長を遂げ、今後はTPPへの加盟でますます成長するといわれています。現にピーターソン国際経済研究所の調査では、ベトナムの主要輸出品である衣料品の…

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