(写真はイメージです/PIXTA)

これまで、経営者の住所は登記情報で必ず公開されていました。しかし、プライバシー保護の重要性が高まっている昨今、制度が見直される方向で進んでいます。企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士がその内容を整理するとともに、改正される理由などについて詳しく解説します。

経営者の住所が「登記必須」なワケ

法人の設立登記においては、必ず登記しなければならない事項が法律で定められています。登記が必須とされる事項の記載が漏れていれば法務局で登記申請は受け付けてもらえず、法人を設立することはできません。

 

そして、代表取締役の住所は、登記すべき事項の1つです。これは、上場企業など誰もが知る企業であっても、1人や数人で行っている小さな企業であっても例外ではありません。

 

経営者である代表取締役の住所が登記事項である最大の理由は、訴訟時などの対応のためであるとされています。もちろん、会社の本店所在地も必須の登記事項です。

 

しかし、提訴されることを予測した企業が本店所在地となっているオフィスをもぬけの殻とし、会社の関係者が誰もそのオフィスに出社しなくなってしまえば、適切な訴訟を行うことは困難でしょう。

 

一方で、自宅の引っ越しはオフィスの移転や解約と比べて容易ではなく、たとえ会社の本店所在地がもぬけの殻になってしまっても、経営者の自宅宛てに訴状の送達送付をするという選択を取ることが可能です。

 

これが、経営者の住所が必須の登記事項である最大の理由とされています。

 

しかし、生活の本拠を知られたくない経営者が登記のためだけにウィークリーマンションを別で借りて住民票を移す行為などがしばしば行われており、実効性には疑問が持たれているところです。

法人登記のキホン

経営者の住所公開に関連して、法人の登記についての基本を知っておきましょう。

 

株式会社設立時に登記すべき8項目

株式会社の設立に際しては、最低限、次の事項を登記すべきこととされています。

 

・商号
・本店所在地
・事業目的
・資本金額
・発行可能株式総数
・発行済株式総数
・取締役の氏名
・代表取締役の氏名と住所

 

そのため、会社の登記事項証明書(登記簿謄本)には、これらの事項がすべて掲載されています。

 

法人の「登記事項証明書」は誰でも請求可能

法人の登記事項証明書は、法務局へ行って1通600円の手数料さえ支払えば、誰でも簡単に取得することができます
※ 法務省:登記手数料について

 

法人との関係性なども一切問われませんので、自分とまったく関係のない法人の登記事項証明書を取ることも可能です。

 

また、請求用紙などには、請求者の氏名を記載することとなっているものの、特に請求者の本人確認がなされるわけでもありません。つまり、上で記載をした登記事項証明書はすべて、誰でも簡単に見ることができるということです。

 

また、郵送で取り寄せることもできます。

 

法人の「登記情報」もインターネットで閲覧できる

法人の登記情報は、登記情報提供サービスへ登録して1通332円の手数料を支払うことで、誰でもオンライン上で閲覧することが可能となります※1、※2
※1 登記情報提供サービス
※2 法務省:登記情報提供サービスの利用料金等一覧

 

オンライン閲覧であっても掲載される情報は登記事項証明書と同じであり、経営者の住所を確認することも可能です。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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