(※写真はイメージです/PIXTA)

「マルサが税務調査にやってきた」「国税局の査察部が乗り込んできた」…こうした状況は、どのような場合に起こるものなのでしょうか。マルサとは何か、通常の税務調査とは何が違うのか、マルサの調査目的や調査実態はどのようなものか。マルサや国税局のOB税理士が多数在籍する税理士法人松本が解説します。

「マルサ」とは?

テレビや映画などで時々聞くことのある「マルサ」とは、どのようなものなのでしょうか。

 

■マルサ=国税局査察部などを指す言葉

マルサとは、国税局の査察部などの部署や、査察部が扱う事案などを表す言葉です。査察の「査」を丸で囲んで「マルサ」と読む俗称で、1980年代にヒットした映画「マルサの女」で広く知られる言葉となりました。

 

マルサの女以外でも、テレビドラマやニュースなどで急に会社へ国税局の査察官が押しかけてきたり、ダンボールいっぱいの資料やパソコンなどを押収したりする光景を見ることがあります。

 

■マルサの税務調査は「悪質な脱税」等に対する犯罪捜査

マルサでは、大口かつ悪質な脱税や犯罪行為が疑われる事業者に対して調査を行います。

 

この調査は「強制捜査」と呼ばれる犯罪捜査となっており、適切な納税を指導する目的で行われる通常の税務調査とは異なるものです。

 

■事前連絡ナシで大規模な一斉調査を行う

国税局の査察部が行う税務調査は、事前に何の連絡もなく、ある日突然多数の査察官がオフィスや自宅に乗り込んでくる「強制調査」となります。

 

動員される査察官の人数が100人を超えることも珍しくなく、大規模な一斉調査となることが多いでしょう。

「マルサの調査」と「通常の税務調査」の違いは?

マルサが行う犯罪捜査と通常の税務調査には、以下のような違いがあります。

 

■「任意」か「強制」か

普段税務署が行っている税務調査は、事前連絡や協力、同意を得て進んでいく任意調査であるのに対して、マルサの調査は事前連絡も同意を得ることもなく、強制的に行われます。

 

通常の税務調査が、納税者の正しい申告や間違いがあった場合に指導することなどが目的です。これに対して、強制捜査は脱税や犯罪行為に対する証拠がある程度押さえられている「裏が取れた」状態で実施されるものとなります。

 

国税犯則取締法で定められた犯罪捜査であるため、証拠の隠ぺいや逃亡を阻止する目的で、事前連絡や同意なく行われるのです。

 

■「税務署」か「国税局査察部」か

通常の税務調査(任意調査)は管轄の税務署が行い、強制捜査は国税局査察部が行います。

 

任意調査で訪問する調査官は1~数名であるのに対して、強制捜査では100~200人の調査官が投入されるため大規模です。

 

国税局が行う任意調査もありますが、次章で詳しく解説します。

マルサの調査目的は?強制捜査“以外”の調査はある?

一般的に行われている税務調査とマルサの強制捜査との違いがわかったところで、マルサの対象となる税務調査やその目的などについても見ていきましょう。

 

■強制捜査の目的は「検察への告発」

マルサが行う強制捜査は、検察官への告発が目的となる犯罪捜査です。そのため、差し押さえや強制的な立ち会い捜査(臨検)などについて、裁判所から許可を得て査察調査に臨んでいます。

 

マルサが捜査を行った後に検察官へ告発する確率は7割ほどとなっており、告発された多くの事例で有罪判決が出ています(※参考:令和3年6月 国税庁『令和2年度 査察の概要』)。

 

■「国税局による調査」はマルサだけではない

上記のような犯罪捜査だけでなく、国税局では主に資料をメインとした調査や、任意調査を行う部署も存在します。国税局の資料調査課は「リョウチョウ」と呼ばれ、マルサの対象とするべきかの選定や犯罪の悪質性などについて調査をする部署です。

 

リョウチョウからの調査は任意調査の形を取っており、マルサほどの強制力はないものの、事前連絡なく訪問される無予告調査である点はマルサと同様で、訪問する調査官も数10人規模となることが多いようです。

マルサの調査対象になりやすい納税者とは?

不正を行っているすべての納税者がマルサの対象となるわけではありません。しかし、一定の条件にあてはまる場合には、事前調査の段階で捜査対象としてピックアップされやすい可能性があります。どのような条件に該当する場合に、マルサの対象となりやすいのでしょうか。

 

■1億円規模の不正が疑われるケース

マルサの捜査対象となる可能性が出てくる目安として、1億円という単位がキーワードとなることがあります。

 

マルサの捜査は人員数も規模も相当大きいため、強制捜査に踏み切って検挙できる不正総額が1億円ほどなければ、費用対効果を上げにくいとされているからでしょう。

 

■不当な所得金額が2,000万円相当に及ぶケース

もう1つ、通常の税務調査で不当な所得金額が2,000万円相当あると思われる事例については、税務署から国税局へと管轄が変わる場合があります。

 

国税局の捜査対象となっていなくても、税務調査の内容について、税務署から国税局まで詳細が報告されている可能性はあるでしょう。

 

■たとえ小規模事業者でも「消費税の脱税」は調査対象となる可能性

「うちは1億円も扱うほど規模が大きくないから大丈夫」「所得は2,000万円よりも少ないから安心だ」と思うのはおすすめしません。

 

中小規模の事業者が増えている近年においては、上記で挙げたほどの所得や売上がなかったとしても、マルサの対象となる可能性があるからです。

 

税務署や国税局は、特に消費税の脱税行為について厳しく取り締まる傾向にあります。脱税を疑われるような時期に急に貯蓄を増やしたり、取引先がマルサの対象となったりした場合、小規模の事業者であっても、厳しい捜査の手が及ぶ可能性もゼロではないでしょう。

 

ひとたびマルサの強制捜査が行われてしまえば、有効な手立てを取ることは難しいものです。しかし、税務署の税務調査や国税局の資料調査課からの調査であれば、一度税理士に相談してみるとよいでしょう。

まとめ:脱税や不正を疑われないために…

マルサとは国税局の査察部や強制捜査のことを指しており、悪質かつ大口な脱税や不正といった犯罪行為を取り締まる目的でマルサの捜査が行われます。

 

1億円規模の不正や、税務署の税務調査で2,000万円を超える不正所得の疑いがあった場合に、マルサの対象となりやすいと言われています。しかし、近年ではもっと小さな規模の不正でもマルサの手が入る可能性もあるのです。

 

税務調査や国税局のリョウチョウからの調査段階であれば、税理士へ相談してみましょう。

 

 

税理士法人松本

 

 

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※本記事は、税理士法人松本のブログより転載したものです。

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