血液検査の「ALT/AST、γ-GTP」に着目
健康診断を定期的に受けている人は、そのなかに肝機能の状態を表す項目がありますので、毎回きちんと確認しましょう。健康診断の数値に敏感になることは、脂肪肝や肝臓の異常に気づく第一歩になります。血液検査項目のなかで、肝機能の指標となるのは、ALT/AST、γ-GTPの3つです。これらがどれくらい血液中に漏れ出ているかによって、脂肪肝がありそうかどうかが推測できます。
■ALT(GPT)/AST(GOT)…特に「ALTの大幅上昇」に注意
肝細胞で作られる酵素でアミノ酸を作る働きをしています。どちらも肝臓に炎症が起こると値が上昇しますので、ともに上昇しているときには、肝臓にダメージが生じていて働きが悪くなっていることが分かります。
ただしALTの多くは肝臓の細胞に存在しますが、ASTは肝臓以外に筋肉や赤血球中にも存在します。このためALTが正常でASTのみが上昇している場合は肝臓の機能は保たれていると考えられます。一方でALTの上昇のほうが大きい場合には、脂肪肝をはじめアルコール性肝炎や肝硬変など肝臓へダメージを与える病気の存在が疑われます。
■γ-GTP…飲酒量にかかわらず、高くなったら要注意
γ-GTPは、解毒に関わる酵素です。アルコールに反応するためお酒をよく飲む人では高い傾向にあります。γ-GTPは禁酒して2週間もすればかなり改善しますが、調子が良くなったと思って大量飲酒をすれば肝機能は再び悪化していくので注意が必要です。
そのほか服用している薬やサプリメントに反応してγ-GTP値が高くなることもあります。お酒を飲まない人でγ-GTPが高い場合には、食べ過ぎによる脂肪肝の可能性があります。
■数値目標:脂肪肝が疑われる「基準」
ASTあるいはALTが31以上、もしくはγ-GTPが男性51以上、女性31以上のいずれかを満たした場合は脂肪肝の可能性が高いと考えられます。
なお肝細胞の線維化が進むと、血小板が破壊され数値が下がるため、血小板の検査数値から、肝線維化の進行をある程度予測することができます。基準値は14万~34万/μLで、14万/μL未満の場合には、肝臓が線維化している疑いがあります。
健康診断を受けた際には、これらの数値に注目し、それぞれ基準値を超えていないか確認しましょう。
<基準値>
ALT(GPT) 基準値 31未満
AST(GOT) 基準値 31未満
γ-GTP 基準値51未満(女性は31未満)
注意点として、肝機能検査値(AST、ALT、γ-GTP)が基準値内なのにNAFLD(飲酒が原因でない脂肪肝)だったという症例もあります。確定診断は、やはり医療機関で行うことが重要です。
セルフチェックにオススメの「FIB-4 index」
■肝臓の繊維化の進行度、すなわち「肝硬変」に進展していないかをチェック
FIB-4 indexは、肝臓の線維化の進行度をみるためのスコアリングシステムで、肝臓が硬くなっていないかどうか、その傾向を捉えることができます【図表】。
年齢および血液検査結果のAST、ALT、血小板数を使用します。日本肝臓学会ウェブサイトに、検査数値を入力すれば簡単に自動計算してくれるフォームがあります。医療従事者向けに作られたページですが、参考になるでしょう。結果は以下のようになります。
1.3未満…リスクは低いです。
1.3以上2.67未満…線維化が進行している可能性あり。精密検査を受けましょう。
2.67以上…肝硬変が強く疑われます。すぐに受診しましょう。
脂肪肝が疑われる場合、何科を受診すべき?
健康診断結果を見て、肝機能異常、メタボリック症候群、BMIが25以上のいずれかに当てはまる人は、症状が無くても医療機関への受診が勧められます。
またアルコールを多飲される人は、アルコール依存症の可能性もあり、いずれ断酒治療が必要になることから、消化器専門医あるいは肝臓専門医を受診することをお勧めします。
脂肪肝の検査で受診する際は、基本的に内科を受診すれば問題ありませんが、できるだけ消化器も診察していて、かつ腹部超音波検査の装置があるとベターです。
脂肪肝と診断され、肝臓の線維化が疑われた場合は、特に肝臓を専門とする医師がいる病院を紹介してもらいましょう。多くの場合は、超音波エラストグラフィやフィブロスキャン(肝硬変の進行度が分かる検査)、CT、MRIがある病院、肝生検が可能な病院が条件になるので、総合病院や大学病院となります。特にフィブロスキャンやMRエラストグラフィの検査機器がある病院は全国でも限られています。事前に医療機関のウェブサイト等で調べておくと良いでしょう。
川本 徹
みなと芝クリニック 院長
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