2022年5月分鉱工業生産指数・速報値について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

中国でのロックダウン等の影響を受けて、生産は2ヵ月連続して前月比低下

 

出荷指数、在庫指数も低下。基調判断「生産は弱含んでいる」に下方修正

 

5月分先行CI・一致CIとも前月差下降に。景気判断は4ヵ月連続「改善」か

 

 

(鉱工業生産)

●鉱工業生産指数・5月分速報値・前月比は▲7.2%と、中国でのロックダウン等の影響から大幅に低下した。低下は2ヵ月連続である。季節調整値の水準は88.3で、20年8月の88.3以来の水準だ。前年同月比は▲2.8%で3ヵ月連続の低下である。

 

●5月分鉱工業生産指数では、全体15業種のうち、前月比上昇は無機・有機化学工業など2業種だけで、自動車工業や電気・情報通信機械工業、生産用機械工業など13業種が前月比低下したことで、全体として大幅に低下した。

 

●経済産業省の基調判断は20年8月分から21年7月分まで、「生産は持ち直している」になっていたが、21年8月分では、19年1月分・2月分以来の、「生産は足踏みをしている」に引き下げられ、9月分・10月分では判断が継続となった。11月分では「生産は持ち直しの動きがみられる」に上方修正され、12月分・22年1月分・2月分・3月分と同じ判断だった。前回4月分では「生産は足踏みをしている」に下方修正された。今回5月分では「生産は弱含んでいる」に連続して下方修正された。

 

●製造工業予測指数5月分は前月比+4.8%の上昇であった。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値では、5月分の前月比は先行き試算値最頻値で▲0.5%の低下になる見込みで、90%の確率に収まる範囲は▲2.6%~+1.6%になっていた。実際には、鉱工業生産指数の前月比が▲7.2%の低下になったが、これは製造工業予測指数を12.0ポイント下回る低下率で、試算値下限をも4.6ポイント下回った。

 

●5月分速報値の鉱工業出荷指数は、前月比▲4.3%と2ヵ月連続の低下になった。前年同月比は▲3.2%と5ヵ月連続の低下になった。

 

●5月分速報値の鉱工業在庫指数は、前月比▲0.1%と3ヵ月連続の低下になった。前年同月比は+4.6%と9ヵ月連続の上昇となった。

 

●5月分速報値の鉱工業在庫率指数は、前月比+4.7%と2ヵ月ぶりの上昇になった。前年同月比は+9.6%と9ヵ月連続の上昇となった。

 

●鉱工業全体の在庫循環の動きをチェックするために、縦軸に鉱工業在庫指数・前年比、横軸に鉱工業出荷指数・前年比をとった在庫サイクル図をつくると、20年10~12月期、21年1~3月期では「意図せざる在庫減局面」になっていた。4~6月期では「在庫積み増し局面」に入った。7~9月期では引き続き「在庫積み増し局面」となった。10~12月分では在庫が前年同期比+4.9%、出荷が前年同月比0.0%の伸び率になり、「在庫積み上がり局面」となった。22年1~3月期では在庫が前年同期比+6.8%、出荷が前年同期比▲1.8%の伸び率で引き続き「在庫積み上がり局面」となっていた。今回4~5月分では在庫が前年比+4.6%、出荷が前年比▲4.0%の伸び率で、「在庫積み上がり局面」継続となった。なお、部材調達不足などによる生産の減少による影響が含まれていることなどを考慮することが必要な局面であろう。

 

 

●鉱工業生産指数の先行きを製造工業予測指数でみると6月分は前月比+12.0%の上昇、7月分は前月比+2.5%上昇の見込みである。過去のパターン等で製造工業予測指数を修正した経済産業省の機械的な補正値でみると、6月分の前月比は先行き試算値最頻値で+4.9%の上昇になる見込みである。90%の確率に収まる範囲は+2.7%~+7.1%になっている。

 

●先行きの鉱工業生産指数、6月分を先行き試算値最頻値前月比(+4.9%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲3.6%の低下になる。また、6月分を製造工業予測指数前月比(+12.0%)で延長すると、4~6月期の前期比は▲1.7%の低下になる。4~6月期の前期比は3四半期ぶりの低下になりそうだ。

 

●先行きの鉱工業生産指数、6月分に先行き試算値最頻値前月比を適用したケースで、7月分を製造工業予測指数前月比(+2.5%)、8・9月分を前月比0.0%で延長すると、7~9月期の前期比は+3.2%の上昇になる。また、6月分に製造工業予測指数前月比を適用したケースで、7月分を製造工業予測指数前月比(+2.5%)、8・9月分を前月比0.0%で延長すると、7~9月期の前期比は+7.8%の上昇になる。今のところ生産指数は、4~6月期の前期比が低下になっても、7~9月期は前期比上昇に戻る可能性が大きそうだ。

 

(アニマルスピリッツ指標)

●経済産業省は製造工業生産予測指数からアニマルスピリッツ指標を作成している。21年6月調査結果で、アニマルスピリッツ指標(生産活動マインド指標:DI)は10ヵ月連続のプラスの数値となり、企業の生産マインドは強気超の状況が続いていたが、21年7月~22年6月調査結果ではDIは12ヵ月連続のマイナスになっている。22年6月調査結果のDIは▲10.7である。22年5月調査結果のDI▲12.1からマイナス幅が縮小した。

 

 

(5月分の景気動向指数・速報値予測)

●5月分の景気動向指数・速報値では、先行CIが前月差▲1.1程度の下降になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な9系列では、新設住宅着工床面積、消費者態度指数の2系列が前月差寄与度プラスになり、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル) 、新規求人数、日経商品指数、マネーストック、東証株価指数、中小企業売上げ見通しDIの7系列が前月差寄与度マイナスになるとみた。

 

●5月分の一致CIは前月差▲1.6程度の下降になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列では、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率、輸出数量指数の4系列が前月差寄与度プラスになり、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数の4系列が前月差寄与度マイナスになるとみた。

 

●5月分で景気の基調判断は、4ヵ月連続して景気拡張の可能性が高いことを示す「改善」になると予測する。予測通りだと前月差も、3ヵ月後方移動平均の前月差もともに下降に転じる。但し、3ヵ月後方移動平均のマイナス幅は▲0.37程度にとどまり、1標準偏差の▲1.00にとどかない。再び「足踏み」に下方修正になるための「3ヵ月後方移動平均の符号がマイナスに変化し、マイナス幅(1ヵ月、2ヵ月または3ヵ月の累積)が1標準偏差以上。かつ当月の前月差の符号がマイナス」という条件は満たされないとみられる。

 

●5月分の先行DIは44.4%程度と景気判断の分岐点の50%を下回ると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な9系列中、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、新規求人数、新設住宅着工床面積、日経商品指数、中小企業売上げ見通しDIの4系列がプラス符号に、最終需要財在庫率指数(逆サイクル)、鉱工業生産財在庫率指数(逆サイクル)、消費者態度指数、マネーストック、東証株価指数の5系列がマイナス符号になるとみた。

 

●5月分の一致DIは50.0%程度とちょうど景気判断の分岐点の50%になると暫定的に予測する。速報値からデータが利用可能な8系列中、投資財出荷指数、商業販売額指数・小売業、商業販売額指数・卸売業、有効求人倍率の4系列プラス符号に、生産指数、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、輸出数量指数の4系列がマイナス符号になると予測した。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年5月分鉱工業生産指数・速報値について』を参照)。

 

(2022年6月30日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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