4月分機械受注(除船電民需)前月比+10.8%増加。3月分+7.1%に次ぎ大幅増加
製造業・前月比+10.3%と2ヵ月連続増加、非製造業・前月比+8.9%と2ヵ月連続増加
3ヵ月移動平均3ヵ月ぶり増加等で「持ち直しの動きがみられる」に判断4ヵ月ぶり上方修正
4~6月期見通し前期比▲8.1%。5~6月の各月・前月比▲19.1%で達成。上振れか?
●4月分機械受注(除く船舶電力の民需ベース、以下、除船電民需と表記)の前月比は+10.8%。2ヵ月連続の増加になった。3ヵ月移動平均は前月比+2.5%と3ヵ月ぶりの増加になった。また、機械受注(除船電民需)の前年同月比は+19.0%で13ヵ月連続の増加になった。
●機械受注(除船電民需)の大型案件は、前回3月分では、製造業の非鉄金属で3件(その他重電機1件、原子力原動機2件)だった。今回4月分では、0件であった。
●4月分製造業の前月比は+10.3%と2ヵ月連続の増加になった。4月分の製造業では17業種中、電子計算機等、通信機などの電気機械、電子計算機等、「その他重電機」などの情報通信機械をはじめ全部で12業種が増加した。一方、原子力原動機、「その他重電機」などの非鉄金属をはじめ全部で5業種が減少した。
●4月分非製造業(除船電民需)の前月比は+8.9%と2ヵ月連続の増加になった。3月分では大型案件が2件(火水力原動機1件、原子力原動機1件)だった電力業は、4月分では発電機の2件であった。電力業の前月比は+108.9%と2ヵ月ぶりの増加となった。電力業の増加率が大きかったため4月分の船舶・電力を含む非製造業全体では前月比+24.2%と4ヵ月ぶりに増加になった。大幅な増加である。非製造業12業種中、7業種が増加で5業種が減少となった。電気計測器、電子計算機等などの「その他非製造業」などが増加に寄与した。一方、通信機、電子計算機等などの通信業などが減少に寄与した。
●大型案件は、前回3月分は年度末ということもあって全体で24件。民需は5件(前述の非鉄金属3件と電力業の2件(火水力原動機1件、原子力原動機1件))であった。官公需は15件で、内訳は防衛省12件(航空機10件、船舶2件)、国家公務で1件(船舶1件))、地方公務で1件(化学機械1件)、その他官公需で1件(その他産業機械1件)であった。また、外需が4件(鉄道車両1件、火水力原動機3件)あった。今回4月分では、全体で4件にとどまった。前述した民需の電力業2件と、官公需が1件、外需が1件であった。官公需は地方公務で化学機械、外需は船舶である。
●中小企業の動きを反映している部分がある代理店受注は4月分前月比+3.7%と2ヵ月連続の増加となった。前年同月比は+3.5%と2ヵ月連続の増加になった。
●外需は、4月分の前月比が+52.1%と3ヵ月ぶりの増加になった。前年同月比は+38.2%で2ヵ月連続の増加になった。
●内閣府の基調判断の推移をみると、21年8月分で「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正された。9月分・10月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が据え置かれた。11月分では「持ち直しの動きがみられる」に、さらに12月分では「持ち直している」に上方修正され、22年1月分では判断据え置きとなっていた。しかし、2月分では「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に判断が下方修正され、前回3月分でも前月比は増加に転じたものの、3ヵ月移動平均の前月比が減少であることなどから、判断据え置きになったようだ。今回4月分では、3ヵ月移動平均の前月比が3ヵ月ぶりに増加したことなどで「持ち直しの動きがみられる」に判断が4ヵ月ぶりに上方修正された。
●機械受注(除船電民需)4~6月期の前期比見通しは▲8.1%になった。ウクライナ情勢、それに影響を受けた原材料高に加え、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた上海のロックダウンなどから、企業が設備投資に慎重になったとみられた。4~6月期の前期比実績は09年(平成21年)から21年までの13年間でみると、上振れ5回、下振れ8回であり、若干下振れしやすい傾向がある四半期である。22年(令和4年)の見通しは単純集計値に過去3四半期平均の達成率87.4%をかけたものである。見通しの算出に使った達成率がかなり低いこともあり、今年は実績が上振れる可能性の方が大きそうに思われる。
●特に、大きな要因があったわけではないということだが、4月分は全体的に事前予想よりもしっかりした内容になった。このため、5~6月の各月の前月比が▲19.1%で4~6月期の前期比見通し▲8.1%は達成される。5~6月の各月の前月比が▲11.0%なら4~6月期の前期比は0.0%になる。5~6月の各月の前月比が0.0%なら4~6月期の前期比は+12.0%の増加になる。
●景気ウォッチャー調査の設備投資関連・現状判断DIは、21年11月40.0(回答した景気ウォッチャー・5人)、12月46.9(同8人)、22年1月33.3(同3人)、2月64.3(同7人)、3月43.8(同8人)、4月37.5(同4人)、5月37.5(同6人)と推移している。5月では「各企業共に、大型設備投資には慎重であり、3ヵ月前と比較し大きく変動はない。(九州:その他サービス業[物品リース]〔職員〕)」というコメントがあった。
●一方、設備投資関連・先行き判断DIは21年11月57.1(回答した景気ウォッチャー・7人)、12月60.0(同5人)と4ヵ月連続の50超になった。その後、22年1月37.5(同8人)、2月は66.7(同3人)、3月は37.5(同6人)、4月25.0(同2人)、5月43.8(同8人)と推移している。5月では「いろいろな問題が少しずつ解消されてきて生産は回復すると思う。抑えていた設備投資も国内向けで増加し、当社の新製品も大きく評価されると思う。(東海・その他非製造業[ソフト開発]〔経営者〕」というコメントがあった。
●日本工作機械工業会によると、22年5月分速報値の工作機械の国内向け受注額の前年同月比は+49.0%と、21年3月分+18.2%、4月分+70.6%、5月分+82.6%、6月分+91.1%、7月分+82.9%、8月分+93.2%、9月分+90.2%、10月分+74.1%、11月分+84.9%、12月分+60.8%、22年1月分+67.3%、2月分+60.4%、3月分+48.8%、4月分+47.5%に続き、15ヵ月連続の増加になった。前年同月比はピーク時より鈍化したものの、国内向け工作機械受注・前年同月比は増加傾向にあることが示唆される。機械受注統計での民需からの工作機械受注も前年同月比2ケタ増加の動きになっている。22年4月分の前年同月比+39.4%と、21年3月分+17.0%、4月分+71.4%、5月分+85.6%、6月分+77.2%、7月分+84.8%、8月分+91.4%、9月分+80.1%、10月分+63.5%、11月分+90.7%、12月分前年同月比+67.8%、22年1月分前年同月比+59.4%、2月分+55.6%、3月+44.4%に続き14ヵ月連続の増加である。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2022年4月分「機械受注」のデータ』を参照)。
(2022年6月15日)
宅森 昭吉
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
理事・チーフエコノミスト