ボルカー時代のFRB ~インフレをどう退治し、株価はどう反応したか【ストラテジストが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●ボルカー氏は79年10月、操作目標をFF金利から非借入準備に変更、その後FF金利は急騰へ。

●米国は82年までに2回景気後退入り、失業率も悪化、ただ物価の伸びは1981年5月以降鈍化。

●今回はQTで準備預金を圧縮、FF金利急騰を避けて資金量を絞ることができればインフレ抑制も。

ボルカー氏は79年10月、操作目標をFF金利から非借入準備に変更、その後FF金利は急騰へ

「インフレファイター」として知られるポール・ボルカー氏は、1979年8月6日に米連邦準備制度理事会(FRB)の議長に就任しました。当時の米国は、第2次石油危機の影響で、深刻なインフレに直面していました。こうしたなか、ボルカー氏は1979年10月6日、金融政策の操作目標を、「フェデラルファンド(FF)金利」から「非借入準備」に変更する、新金融調節方式の導入を決定しました。

 

非借入準備とは、金融機関がFRBに積み立てている準備預金総額のうち、FRBからの借入分を差し引いたものです。新金融調節方式の狙いは、非借入準備を操作目標として、オペ(公開市場操作)による引き締めを行い、通貨供給量の伸びを抑制し、インフレを抑え込むことです。一方、FF金利については、金利の決定水準を資金の需要給に委ね、大幅な変動を容認したことから、新金融調節方式の導入後、急騰しました。

米国は82年までに2回景気後退入り、失業率も悪化、ただ物価の伸びは1981年5月以降鈍化

ボルカー氏がFRB議長に就任した1979年8月、消費者物価指数(CPI)の伸び率は前年同月比で11.8%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は10.94%でした(図表1)。その後、実効FF金利は1981年1月に19.08%まで上昇し、米国経済は、1980年1月から7月までと、1981年7月から1982年11月までの2回、景気後退を経験しました。また、この間、失業率は悪化が続き、1982年11月には10.8%に達しました。

 

(注)データは1979年8月から1987年8月。消費者物価指数は総合指数の前年同月比伸び率。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表1]ボルカーFRB議長時代の物価など (注)データは1979年8月から1987年8月。消費者物価指数は総合指数の前年同月比伸び率。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

CPIについては、1980年3月に前年同月比で14.8%上昇しましたが、その後は伸びが鈍化し、1981年5月には伸び率が2ケタを割り込みました。物価が落ち着き始めたため、FRBは1982年秋以降、金融政策の操作目標を「借入準備」(金融機関のFRBからの借入金)に変更し、通貨供給量に加え、金利水準と実体経済も勘案し、政策運営を行うこととしました。これには、新金融調節方式の導入後に拡大したFF金利の変動を抑える意図があります。

今回はQTで準備預金を圧縮、FF金利急騰を避けて資金量を絞ることができればインフレ抑制も

ボルカー氏は1987年8月11日にFRB議長を退任しましたが、同年8月のCPIの伸び率は前年同月比で4.3%、失業率は6.0%、実効FF金利(平均値)は6.73%でした。ボルカー氏の政策は、景気を犠牲にした面はあったものの、インフレ抑制には有効だったとの評価も聞かれます。市場の動きをみると、ダウ工業株30種平均は、物価の落ち着きが明確になってきた1982年の夏以降、上昇傾向が鮮明になっています(図表2)。

 

(注)データは1979年8月から1987年8月。 (出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成
[図表2]ボルカーFRB議長時代のダウ平均 (注)データは1979年8月から1987年8月。
(出所)Bloombergのデータを基に三井住友DSアセットマネジメント作成

 

ボルカー氏は準備預金を絞りインフレ抑制を図りましたが、準備預金に影響を与えるFRBの現在の政策は、量的引き締め(QT)です。前回のQTでは、FF金利に強い上昇圧力が生じ、FF金利が上限金利を超える場面もみられました。今回は、前回よりも速いペースでのQTと、大幅利上げによる上限引き上げが見込まれています。FF金利の急騰を避け、資金量を絞ることができれば、景気を冷やしすぎず、インフレを抑制する効果も期待されます。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『ボルカー時代のFRB ~インフレをどう退治し、株価はどう反応したか【ストラテジストが解説】』を参照)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 チーフマーケットストラテジスト

旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)で為替トレーディング業務、市場調査業務に従事した後、米系銀行で個人投資家向けに株式・債券・為替などの市場動向とグローバル経済の調査・情報発信を担当。
現在は、日米欧や新興国などの経済および金融市場の分析に携わり情報発信を行う。
著書に「為替相場の分析手法」(東洋経済新報社、2012/09)など。
CFA協会認定証券アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本証券アナリスト協会検定会員。

著者紹介

投資情報グループは、運用や調査経験豊富なプロフェッショナルを擁し、経済や金融市場について運用会社ならではの情報発信を行っています。幅広い投資家に良質な情報を伝えるべく、年間で約800本の金融市場・経済レポートの発行の他、YouTube等の動画、Twitterでの情報発信を行っています。

著者紹介

連載【市川雅浩・チーフマーケットストラテジスト】マーケットレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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