●鳩山一郎氏から菅義偉氏までの歴代首相の在任期間と日経平均の騰落率との関係を検証する。
●データ分析の結果、首相の在任期間が長いほど日経平均株価は上昇しやすい傾向がうかがえる。
●在任期間と株価の関係は1つの目安だが、まずは今週末の参院選後、海外投資家動向に注目。
鳩山一郎氏から菅義偉氏までの歴代首相の在任期間と日経平均の騰落率との関係を検証する
今回のレポートでは、歴代首相の在任期間と日経平均株価の関係について考えます。はじめに、歴代首相については、日経平均株価の算出開始が1950年9月7日(1949年5月16日まで遡及計算)であることを踏まえ、吉田茂氏(在任期間は1948年10月15日から1954年12月10日まで)の次の首相である鳩山一郎氏から、前首相の菅義偉氏までを対象とします。
次に、日経平均株価については、首相の就任日と退任日の終値を用いて騰落率を計算します。なお、就任日と退任日が営業日でなかった場合は、前営業日の終値を用います。以上より、歴代首相の在任期間と、その期間における日経平均株価の騰落率をまとめたものが図表1となります。両者の間には、何かしらの関係が存在するのか、ここから詳しく検証していきます。
データ分析の結果、首相の在任期間が長いほど日経平均株価は上昇しやすい傾向がうかがえる
在任期間の長かった上位10名をみると、在任期間は平均で1,572.2日、日経平均株価の騰落率は平均で61.7%の上昇でした。同様に、中位10名では、平均在任期間が609.1日、平均騰落率は18.4%の上昇となり、下位10名では、平均在任期間が258.7日、平均騰落率は4.7%の下落となりました。ここから、在任期間が長いほど、日経平均株価は上昇しやすい傾向がうかがえます。
また、在任期間を横軸、日経平均株価の騰落率を縦軸に取って、分布図を作成したものが図表2です。データにややバラツキはみられるものの、右肩上がりの分布となっており、やはり、在任期間が長いほど、日経平均株価は上昇しやすい傾向が示唆されています。なお、在任期間と日経平均株価の騰落率について、相関係数を計算すると0.75となり、一般に強い相関関係があると解釈されます。
在任期間と株価の関係は1つの目安だが、まずは今週末の参院選後、海外投資家動向に注目
ただ、分析のデータが30と少なく、また、ここでは詳細な分析を省略しているため、分析結果は1つの目安とした方が良いと考えます。それでも、首相の在任期間が長いということは、政権安定の証左であり、これは日本株に投資する海外投資家に好感されやすい材料です。また、経済や金融市場が負のショックに直面した場合、迅速な政策対応が可能になる点で、株式市場にも好ましいといえます。
さて、参院選は7月10日に投開票が行われますが、足元では与党優位の声も聞かれます。仮に、岸田首相が参院選で与党過半数を維持すれば、向こう3年間、国政選挙の予定がない「黄金の3年」という安定期が到来することになります。前述の通り、1つの目安として、長期安定政権なら株高という展開も考えられますが、まずは、参院選後の海外投資家の動向に注目したいと思います。
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『歴代首相の在任期間と日経平均株価の関係【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト