リーキーガット症候群を新しく定義する必要性
■TJが緩くなっていなくても「腸管のバリア機能が低下するケース」がある
これまでのところで、腸管バリア機能の低下した状態、腸管ディスバイオーシス、そしてリーキーガット(intestinal permeability)、腸管免疫の異常などいろいろな病態が出てきたのでここで少し整理しておきましょう。
リーキーガット症候群は腸管上皮細胞という物理的に一番強固なバリア機能が障害を受けた状態です。TJが炎症により障害を受けて、緩んだ状態になると一挙にバリア機能が低下してしまい、身体に慢性炎症が起こります。
では、バリア機能が低下した状態がすなわちリーキーガット症候群と同等かというと必ずしもそうではありません。
以前に食物アレルギーについて説明したときにも詳しく述べましたが、厳密な意味でのリーキーガット症候群が起こっていなくても、腸管のバリア機能が低下した状態があります。TJが緩くなっていなくても、バリア機能が低下し、さまざまな免疫のバランスが崩れた状態があるということです。
腸管ディスバイオーシスは腸管バリア機能の低下に密接に関わっており、別に分けて考えることはできません。腸内環境の乱れた状態をどの角度から見るかの問題だと思います。
腸管ディスバイオーシスが起こる結果、腸管免疫の調節機能が狂い始めることで、身体に慢性炎症が起こるのです。
一方で、これまでは、「リーキーガット」という言葉があまりにも安易に使用されてきたきらいがあるように思います。腸内環境が悪化したことが即、「リーキーガットが起こっている」というように書かれた記事が多いですが、科学的にもっと厳密に病態を分析するべきだと思います。
従来の「リーキーガット症候群」は、あくまでTJが障害を受けて透過性が亢進した状態のことを意味し、腸管バリアの低下した状態のある一面を見たものです。
TJが緩くなるとゾヌリンという物質が高値を示します。これを「狭義のリーキーガット」と考えるといいと思います。
一方、ゾヌリンの値が高くないか測定されていないのに、腸管バリアが低下していると考えられる状態があります。これまでのリーキーガットの定義ではこの状態は含まれないことになります。私はこれを「広義のリーキーガット」と考えるといいのではないかと思います。
そして、そのどちらの場合も、腸管の免疫のバランスに異常をきたし、身体の中に慢性炎症が起こり、さまざまな体調不良や疾患が起こることには変わりがないのです。
では実際にリーキーガット症候群(ここでは、狭義、広義の両方の定義を含む)あるいは腸管ディスバイオーシスでどのような症状が起こってくるかを見ていくことにしましょう。