(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、「慢性炎症」が慢性疾患の発症と深く関係していることが分かってきました。今回は慢性炎症の防御・発生に大きく関わる「腸管のバリア機能」について詳しく見ていきましょう。※本稿は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師並びに株式会社イームス代表取締役社長・藤井祐介氏との共同執筆によるものです。

マイクロバイオータのDNA解析結果で分かってきたこと

■「マイクロバイオームの構成異常」は、さまざまな疾患の誘因になる

最近の次世代シークエンサーを用いたマイクロバイオータの解析から、腸内細菌のすべてのDNA配列が分かるようになってきました。これまでは腸内細菌の実態を知るためには、便の培養検査でしか知ることができませんでしたが、培養検査で検出される腸内細菌は、実際に腸管内に存在する菌のごく一部でしかなかったのです。それが、DNAが調べられるようになって、いっそう細かい分析が可能になったのです。マイクロバイオータのDNA解析結果を「マイクロバイオーム」と言います。

 

そして、炎症性腸疾患、肥満、糖尿病、がん、動脈硬化、自閉症など、ヒトのさまざまな疾患における発症の誘因と、マイクロバイオームの構成の異常とが密接に結びついていることが明らかになってきたのです。

 

マイクロバイオームの構成の異常は「腸管ディスバイオーシス」と呼ばれ、細菌種の数の減少(多様性の消失と言います)や、少ないはずの細菌種の異常な増加、あるいは、通常は優性であるはずの細菌種の減少などを指します。

 

■「腸管ディスバイオーシス」がもたらす「免疫の異常」が炎症を起こす?

腸管ディスバイオーシスがなぜ炎症と結びつき、さらに疾患と結びつくのか?についてはまだ解明されていないことが多くあります。

 

ただ、その理由の一つとして想定されているのは、ディスバイオーシスにより免疫系のバランスが破綻するというものです。つまり、免疫系を活性化するような細菌種が優位となり、逆に、免疫系を抑制するような細菌が減少することで、免疫系の異常な活性化が誘導されるという仮説です。

 

先ほど、この免疫の調節を制御性T細胞が行なっていると書きましたが、腸管ディスバイオーシスが起こることで、制御性T細胞の働きのバランスが崩れてくるのです。

 

その結果、免疫系が食事の成分や腸内細菌など本来は応答してはいけないものに反応し、粘膜のバリア機能の異常と慢性的な炎症がもたらされるのではないかと考えられています。

次ページTJが緩んでいなくてもバリア機能の低下はあり得る
自己治癒力を高める医療 実践編

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