(写真はイメージです/PIXTA)

健康診断でもおなじみのX線やCTなどを用いた放射線治療は、私たちにとって身近な存在です。本記事では、そんな放射線治療の仕組みと人体に与える影響について、京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏と関西大手予備校「研伸館」講師の米田誠氏が、物理学の観点からわかりやすく解説します。

気になる発がんリスク…放射線治療が人体に与える影響

CT画像は、画素数が多い(つまり分割するマスが細かい)ほど鮮明な画像になります。スマートフォンの画像でも、画素数の低いデータは粗い画像になりますから、イメージしやすいかと思います。

 

ただし、CTの場合は、一概に画素数が多ければいいというものでもありません。というのも、画素数を増やすためには多くの放射線ビームを照射する必要があるからです。

 

一度に大量の放射線が照射されると、白血病やがんなどの発症リスクが高まります。大量の放射線が臓器や骨髄細胞に当たると、細胞が損傷するのです。この損傷は数時間のうちに修復されますが、放射線の量が非常に大きいと間違って修復される細胞も現われ、これが白血病やがんの原因になるようです。

 

もちろんこのことは広く知られていますから、現在、CTで照射する放射線量は必要最低限の量とし、発がんなどのリスクを高めない工夫がなされています。

 

世界的にはWHO(世界保健機関)やIAEA(国際原子力機関)で、医療に用いられる放射線の人体に対する影響について研究が続けられています。

 

日本でも関連学会などが放射線を用いた診療のガイドラインを示し、各医療機関への周知を行なっています。また、2010年には「医療被ばく研究情報ネットワーク」が設立され、医療放射線が人体に与える影響の研究がオールジャパンで進められています。

 

では、具体的な放射線被ばく量はというと、レントゲン写真で約0.06ミリシーベルト、CTで5〜30ミリシーベルト程度。「シーベルト(Sv)」は放射線が人体に与える影響を表わす単位です。

 

この値だけを見ると不安になるかもしれませんので、[図表8]で国立がん研究センターの見解を紹介しましょう。CTの放射線量を気にするよりも、運動不足を気にしたほうがよさそうですね。

 

[図表8]放射線の線量とがんの相対リスク、生活習慣との関係

 

 

鎌田浩毅

京都大学

名誉教授

 

米田誠

研伸館

専任講師

 

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本連載は鎌田浩毅氏米田誠氏の共著『一生モノの物理学』(祥伝社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養

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祥伝社

京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏と、関西の大手予備校「研伸館」の専任講師の米田誠氏という、二人の「理系を教えるプロフェッショナル」がビジネスパーソン向けに執筆した本書は、医療や日常の中にあるテクノロジーを題材にしな…

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