「エーテル」の実証を試みたアルバート・マイケルソン
エドワード・モーリーとともに、当時光を伝達する物質と考えられていた「エーテル」という概念の実証を試みた。光の性質を利用した眼球内の水晶体再建術も、こうした様々な研究をもとに成り立っている。
「見る」を助ける眼の仕組み…水晶体の重要性
光を曲げる水晶体
いま、読者のみなさんはこの文章を目で見ていることと思います。「見る」という行為はあまりにも日常的なので、いちいち意識することは少ないでしょう。
しかし、ものを見るという行為は実はとても複雑な現象なのです。
まず[図表1]を見てください。私たちの目をイラストにしたものです。人間の目は、巧妙につくられたカメラのような極めて精緻な構造をしています。
なかでも重要なのが、レンズのような役割を持つ、透明な「水晶体」です。
私たちがものを見ることができるのは、物体が発した(あるいは反射した)光が網膜で信号に変わり、その信号を脳が再構成して視覚にするからです。みなさんがこの文章を読むことができているのも、本の紙面に反射した光が網膜に飛び込んでいるためなのです。
しかし、光が目に入るだけでは鮮明な視覚は得られません。カメラがピントを合わせるように、光がきれいに網膜上の一点に集まらないとうまく信号に変えられないためです。
そこで、水晶体の出番です。毛様体筋という筋肉によって水晶体が形を変えることでピントを調整し、光がうまく網膜上の一点に集まるようにするのです。
この「光が網膜状の一点に集まる」ことを「像を結ぶ」といいます。
「状況に合わせて変化」する水晶体
水晶体はピント調整のために「屈折」と呼ばれる光の性質を利用しています。
光は基本的に直進しますが、空気中から水中に入ったり、水中からガラスの中に入ったりと、性質が違う物質に進入するときに方向を変える性質があります。これが屈折です。
光が屈折するのは、光の速さが変わるからです。光が物質内を進むスピードは物質によって変わることをご存じでしょうか。光が最も速く進めるのは真空中で、その速さはおよそ30万㎞/秒(1秒間で地球を7周半する速さ)にもなりますが、たとえば水中ではこれよりも遅くなります。
真空中に比べてどれだけスピードが落ちるかの度合いを「屈折率」(絶対屈折率)と呼び、水の屈折率は約1.3です。そして2つの物質の屈折率の差が大きいほど、つまり光の速さの差が大きくなるほど光は大きく屈折します。
図表2に示すように、近くを見るときには筋肉(毛様体筋)によって水晶体は厚くなり、光が屈折する角度を大きくします。すると、網膜に像を結ぶことができます。
逆に、遠くのものを見るときには水晶体を薄くすることで光が屈折する角度を小さくして、やはり網膜に像を結ぶのです。