(写真はイメージです/PIXTA)

白内障手術で使われる「多焦点眼内レンズ」。遠近両方にピントが合い、メガネやコンタクトから解放されるとたいへん便利な一方で、従来の単焦点レンズに比べ「高額すぎる」と敬遠されてしまうことも……今回は、そんな「多焦点眼内レンズ」の詳しい仕組みとその課題について、京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏と、関西大手予備校「研伸館」講師の米田誠氏が、物理学の観点からわかりやすく解説します。

遠くを見る人に適した「屈折型多焦点眼内レンズ」

多焦点眼内レンズには、単焦点眼内レンズと同様に「光の屈折」を用いるものと、それとは別に、「光の回折」という現象を用いるものがあります。この2つは光への理解を深めるためにぴったりですから、順番に仕組みを解説していきましょう。

 

まずは、光の屈折を用いた多焦点眼内レンズです。

 

[図表1]に示すように、屈折型の多焦点眼内レンズはレンズを複数枚重ねたような形状をしています。そしてそれぞれの場所によって異なる角度で光を屈折させ、光を集めています。

 

[図表1]屈折型の多焦点眼内レンズの形状および集光
[図表1]屈折型の多焦点眼内レンズの形状および集光

 

まず、レンズの中央部。ここは少しだけ光を屈折させます。水晶体を薄くして遠くにピントを合わせるときと同じ状況を人工的に再現しているのです。次に、レンズの周縁部です。ここは大きく光を屈折させます。中央部とは逆に、水晶体を厚くして近くにピントを合わせる状況を再現しています。

 

つまり屈折型の多焦点眼内レンズは、ピントを合わせるためにいちいち形状を変化させる水晶体とは違い、初めから複数の角度で光を屈折させられる形にしているのです。

 

しかし、このレンズにも弱点があります。近くのものが見えづらくなるリスクがあるのです。

 

近くのものを見るときは、前述のようにレンズの周縁部を使うのですが、目の周りの筋力は加齢とともに落ちますから、瞳孔が開きにくくなります。その結果、レンズの周縁部を光が通過しにくくなってしまい、次第に近くのものにピントが合わなくなっていくのです。

 

このデメリットがあるため、屈折型の多焦点眼内レンズは、どちらかというと遠方を見ることを重視したい方で、かつ比較的若い患者さんに適した治療法とされています。

 

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本連載は鎌田浩毅氏米田誠氏の共著『一生モノの物理学』(祥伝社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

一生モノの物理学 文系でもわかるビジネスに効く教養

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鎌田 浩毅・米田 誠

祥伝社

京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏と、関西の大手予備校「研伸館」の専任講師の米田誠氏という、二人の「理系を教えるプロフェッショナル」がビジネスパーソン向けに執筆した本書は、医療や日常の中にあるテクノロジーを題材にしな…

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