「相続専門」を標榜し、多くの相続案件を扱ってきた税理士の実父が逝去。それにより、相続専門税理士が自ら相続を経験することになりました。実父は都市農家で、相続が大変になりがちな要件がそろっていたのです。プロはどのように対策を立てたのでしょうか。※本記事は『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

父の生前から取り組んだ「課題解決」とは?

一般的に、都市近郊農家の農業所得は、さほど多くありません。

 

「現預金はない。収入も少ない。けれど、利用価値の低い土地だけはたくさんある」という実情を改善しなければ、「相続税を払うこと」も、「相続手続きをスムーズに進めること」も難しくなることが私には予想できました。

 

そこで私は、父と相談をして、「父がまだ元気なとき」から、

 

「問題地の解消」

「農業に代わる現金収入の確保(賃貸事業)」

「不動産管理会社の設立」

「生前贈与」

「遺言書の作成」

 

など、「①相続対策(相続税対策)」と「②相続税の申告、納税の対策」に取り組みはじめたのです。

 

その結果、相続税を「約30%」も減額させることに成功しました。

 

★父の相続で行ったこと


 ①相続対策(相続税対策) → 「亡くなる前」にすること 


◆最初にどれくらいの財産があるか調べる

⇒ 財産を整理・把握する(不動産、金融資産など、どんな資産がどれくらいあるか)


◆分割対策 → 相続争いを避けるためにすること

⇒ 財産の分け方を決める(誰に、どの財産を、いくら譲るか)

⇒ 生前から財産を移す(贈与する)

⇒ 遺言書を残す(親の考えを子どもに伝える) など


◆評価減対策 → 相続税を軽くするためにすること

⇒ 相続税の節税方法を検討、実施する

⇒ 税額控除(税負担が軽くなる制度)を利用する など


◆納税対策 

⇒ 納税資金の確保の方法を考える


 ②相続税の申告、納税の対策 → 「亡くなったあと」にすること 


⇒ 父が所有する不動産や預貯金の名義を変更する

⇒ 相続税の申告をして、納税する

⇒ 相続税を払いすぎていないか、見直す など

相続トラブルは「お金がある人」だけの問題ではない

相続時のトラブルは、年々、増加傾向にあります。最高裁判所の司法統計によると、2000年時点で8889件だった調停・審判件数が、2020年には1万1303件に増えています。

 

相続問題は、多額の資産を保有している人にかぎった問題ではありません。相続財産で争っている金額の割合は、「5000万円以下」が約77%も占めています。

 

「うちには大した財産がないから、揉めようがない」と考える方もいますが、財産がなくても、人の感情はもつれるものです。

 

下記に挙げた「5つ」の項目の中で、「ひとつでも当てはまる人」は、すぐにでも相続対策(相続税対策)をはじめてください。

 

そうしないと、

 

「相続税を余計に支払ってしまう」

「財産の相続分をめぐって、家族間でトラブルが起きる」

 

ことが考えられます。

 

すぐにでも相続対策をはじめたほうがいい人

 

①兄弟がいる人

②土地を持っている人

③相続税を払う可能性がある人

④子どもがいない人

⑤顔を見たことがない相続人がいる人(特に甥・姪)

 

早くから対策に乗り出すことで、

 

「資産を残す」

「節税する」

「家族の平和を守る(相続トラブルを回避する)」

 

ことができるようになります。

 

 

清田 幸弘
ランドマーク税理士法人 代表税理士

 

 

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相続専門の税理士、父の相続を担当する

相続専門の税理士、父の相続を担当する

清田 幸弘

あさ出版

相続税の申告を6,000件超、相談を22,000件超担当―― 日本トップクラスの実績を誇る相続のプロが初めて経験する特別な案件、それが自分の父親の相続でした。 収益を生まない裏山の売却を提案しても首を縦に振ってもらえな…

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