相続専門税理士、「実父の相続」を担当する
私が代表税理士を務める税理士法人は、相続税をはじめとする資産税に特化した税理士法人で、約6000件もの相続案件に関わり、さまざまな事例を経験してきました。ところが2021年、私が「これまでに一度も経験したことのない、特別な相続案件」を担当することになりました。
それは、「自分の父親の相続」です。2021年4月、私の父、清田康明が90歳で亡くなりました。父の死後、相続が発生。私は「相続専門税理士」として、「父を被相続人(財産を譲り渡す人)」「母、姉2人、私の4人を相続人(父が持っていた財産を譲り受ける人)」とする相続税の申告、相続手続きを任されたのです。
土地があるから、相続はややこしくなる
私の生家は、400年以上続く農家で、代々、山林や農地を受け継いできました。
父はまだ小学生だったときに、先代(祖父)から土地を譲り受けています。当時の民法は、「長男が跡取りとして財産のすべてを受け継ぐ」ことを認めていたため、「相続」を経験することなく、父は早世の先代に代わって、家長になったわけです。
父にとって、先代から受け継いだ農地、土地、山林を守るのは当然の役目だったはずです。
ですが私には、父が亡くなる20年以上前から、税理士の知見として、
「このまま土地を所有し続けると、将来、相続手続きが難航する」
「土地をそのまま守り続けることが、結果的に家族に不利益をもたらす可能性がある」
「このまま農業を続けても、事業として成立しない」
と、危機感を抱いていました。
父は農地のほかに、高低差が20m以上もある山林といった「問題地(有効活用ができない土地のこと)」や「行政によって開発を制限されている土地」を所有していました。
こうした空き地は、
「土地としての評価が低い(売却しにくい)」
「収益力がない」
「固定資産税がかかる」
「維持費、管理費がかかる」
といった理由から、不良資産になります。
土地を持っていても、現在の税制では、相続税や固定資産税が重くのしかかり、何も対策を講じなければ、資産は目減りする一方です。
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