(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続専門」税理士の実父は都市農家。来たるべき相続を見据え、親族への資産の移転を着々と進めています。その方法は「暦年贈与」。具体的に、どの程度の節税効果があるのか見ていきましょう。※本記事は『相続専門の税理士、父の相続を担当する』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。

自分の生前に、財産を与えておく方法がある

父は、2006年から2021年までの15年間、7人の孫に対し、毎年生前贈与(暦年贈与)をしていました。

 

生前贈与とは、自分の財産を別の人に無償で与えることです。

 

 ★生前贈与★ 

「生前贈与」とは、自分が亡くなる前(生前)に、財産を与える(贈与)こと。贈与する側とされる側の間で、「あげます」「もらいます」という合意が成立していることが前提。

 

【相続と贈与の違い】

◎相続

 

●自分で相続税を払う時期を決められない。

●相続が発生した時点(その人が亡くなった時点)で、所有する全財産に対して課税される(現預金の税金を先に払い、土地の税金は後回しにする、といったことができない)。

●基本的には、法定相続人しか財産を引き継ぐことができない(配偶者と子ども、配偶者と親、配偶者と兄弟姉妹にしか財産を残せない。遺言書があれば別)。

 

◎贈与

 

●したいときに、いつでも、何度でもできる。

●自分の意思と関係なく税金が発生することはない。

●全財産を一度に贈与する必要がない。

●贈与税がかかるのは、贈与した財産に対してだけ。

●「どんな財産を、いくら贈与したいのか」を自分で決められる。

●法定相続人に限らず、何人に贈与してもよい。

贈与税には「年間110万円」の基礎控除額がある

個人から財産(土地・建物・現金・宝石など)を贈与されると、「贈与税」がかかります。

 

 ★贈与税★ 

ある人から財産をもらったとき、もらった人に課税される税金のこと。

 

贈与税は、「相続税がかかる前に、財産をみんなで分けてしまおう」という抜け道をなくすためにつくられた税金です。そのため、相続税よりも高い税率が設定されています。

 

何も手続きせずに生前贈与をすると、相続税よりも高い贈与税を支払うことにもなりかねません。

 

そうならないように、贈与税が非課税となる制度や、贈与の税率が軽減される制度を利用するのが一般的です。

 

贈与税には、「年間110万円」の基礎控除額(それ以内なら税金がかからない額)が決められています。

 

つまり、「年間110万円を超える財産をもらったとき」は課税されますが、「年間110万円」を超えなければ課税されません。

 

たとえば、「200万円」の贈与があった場合、

 

「(200万円−110万円)×10%(税率)=9万円」

 

贈与税は9万円です。

 

「年間110万円」の基礎控除の範囲内で贈与する分には、税金はかかりません。このメリットを活かすと、億単位の財産を「税金ゼロ」で移すこともできます。

 

子ども3人、孫7人(合計10人)に、それぞれ「1年間で100万円ずつ」贈与するとします。

 

「100万円」であれば、基礎控除額の「110万円」の範囲内なので、贈与税はかかりません。

 

つまり、税金を払うことなく「1年間で1000万円」(100万円×10人)を贈与することができます。

 

これを10年間続けていけば、「10年で1億円」、20年間続けていけば、「20年で2億円」の財産を「税金ゼロ」で贈与できる計算です。

 

地道に相続財産を減らしていくこの対策は、「相続発生までに時間的な余裕があり、相続税対策を急ぐ必要がない方」にとっては、有効な生前対策です。

 

[図表]年間110万円までは贈与税がかからない

 

 

清田 幸弘
ランドマーク税理士法人 代表税理士

 

 

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相続専門の税理士、父の相続を担当する

相続専門の税理士、父の相続を担当する

清田 幸弘

あさ出版

相続税の申告を6,000件超、相談を22,000件超担当―― 日本トップクラスの実績を誇る相続のプロが初めて経験する特別な案件、それが自分の父親の相続でした。 収益を生まない裏山の売却を提案しても首を縦に振ってもらえな…

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