「遺産分割の方法」と「家族への想い」を遺言書へ…
父が亡くなる20年以上前から、私は父に「遺言書」の必要性を伝えていました。
遺言書は、被相続人が、遺産相続についての最終的な想いを伝える書面です。
父は、遺言の中身について司法書士と相談をしながら、
「遺産分割のしかた」と「家族に対する想い、感謝の気持ち」
を遺言書に残していました。
★遺言(いごん・ゆいごん)★
ある人の生きている間の最終的な意思決定(財産の分割方法など)を、その人が死んだあと、具体的に実行させるための方法。満15歳以上になれば、いつでも作成できる。
父が「病気になってから」ではなく、「まだ元気なとき」に遺言書の作成をお願いしたのは、
「亡くなる直前だと、父の死が現実味を帯びてくる(父が死を意識して、動揺しかねない)」
「仮に認知症などで判断能力がなくなった場合、遺言が残せない」
「相続をする子どもたちにとって、相続のことは尋ねにくい」
「家族に対する父の想いを残してほしい」
といった配慮からでした。
遺言書作成の依頼先は、弁護士、司法書士、行政書士、税理士、金融機関などです。
相続税対策なら税理士、権利関係の複雑な不動産がある場合は司法書士、相続トラブルの起きる可能性が高いときは弁護士、気軽に遺言書を作成したい人は行政書士など、それぞれの専門家によってメリットやデメリット、費用が異なります(父は不動産を所有していたため、司法書士に依頼しています)。
どの専門家に依頼すればいいかわからないときは、相続に精通するコンサルティングファームに相談するのがよいでしょう(コンサルティングファームであれば、弁護士、司法書士、行政書士、税理士が在籍しているため、適任者が見つかりやすい)。
遺言書の種類、つくり方は法律で定められていて、それ以外の方法で作成されたものは無効です。
「あの人は、生前にこう言っていた」といった口約束や、録音テープや動画を残していても、遺言としての法律上の効力はありません。
遺言には、大きくわけると、
「自筆証書(じひつしょうしょ)遺言」
「公正証書(こうせいしょうしょ)遺言」
の2種類あります。父が作成したのは、公正証書遺言です。法律に詳しくない場合、自筆証書遺言だと不備が残り、認められないケースがあるからです。
★自筆証書遺言★
遺言者が自分で全文、日付、氏名を書いた遺言書。自筆が条件であり、代筆やテープへの録音は無効だが、平成31年1月13日以後は自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言を作成できるようになった。また法務局に作成した遺言を預けることもできる。遺言者がひとりで作成できるので、費用もかからず、簡単に作成できる。財産の情報が外部に漏れることもない。しかし、紛失や偽造のおそれがあり、内容に不備があると無効になる。
★公正証書遺言★
公証役場(公正証書の作成を行う官公庁)で作成してもらう遺言書。専門家が作成するため法的効力が強く無効になりにくく、紛失や偽造のおそれもない(内容は下記の図表を参照)。ただし、財産の価格をもとに公証人手数料がかかる。
【公正証書遺言の例】
令和〇〇年第〇〇号
遺言公正証書
本公証人は、遺言者〇〇太郎の嘱託により、証人〇〇、同〇〇の立会いのもとに、遺言者の口述した遺言の趣旨を筆記して、この証書を作成する。
第1条 遺言者は、その所有する次に掲げる不動産を含む一切の財産を遺言者の妻〇〇花子に相続させる。
1 横浜市〇〇区〇〇一丁目1番1号 宅地165m2
2 前記同所所在
家屋番号〇〇番
木造瓦葺2階建居宅 1階80m2 2階50m2
3 〇〇銀行〇〇支店の遺言者名義の預金全部
第2条 遺言者は、この遺言執行者として、次の者を指定する。遺言執行者はこの遺言を執行するため、〇〇銀行〇〇支店の預金の解約、払戻、名義書換請求を請求する権限及びその他この遺言執行のために必要な一切の権限を有する。
住所 横浜市〇〇区〇〇二丁目1番1号
職業 行政書士 〇〇
昭和〇〇年〇〇月〇〇日生
第3条 遺言者がこの遺言を作成する趣旨は、次の通りである。
遺言者は長年連れ添った妻花子の今後の生活が心配でならない。遺言者の財産は一人で築いたものではなく、妻花子の協力によるところが大きい。相続人長男〇〇および長女〇〇は第1条に定める相続を了解して、花子が幸福に暮らせるように協力してほしい。
したがって、遺言者の意思を尊重し、遺留分侵害額請求などしないようにお願いする。
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