遺伝的なリスク要因「アポE4」と「炎症」の関係
■アポE4があると「炎症が起こりやすい」。だから発症リスクが上がる
ここからは、最初に触れたアポE4が、どうしてアルツハイマー病のリスク要因になるかを説明していきましょう。
アポE4には以下のような作用があることが分かっています。
①アポE4はサーチュイン遺伝子の活性を低下させる
②アポE4タンパクはアミロイドβの排泄を遅らせる
③アポE4は炎症を促進する物質(NFκB)の産生を促進する
サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子の一種で、身体の炎症を抑える作用があることが分かっています。つまりアポE4遺伝子があると、このサーチュイン遺伝子の活性が低下し、炎症が起こりやすくなるわけです。さらにNFκβという炎症促進物質が増加するため、ますます身体に炎症が起こる方向に働きかけるのです。アポE4がアルツハイマー病の発症リスクを高める理由は、炎症が関連しているのです。
また、アポE4タイプを持っていると、アミロイドβが分解されにくくなり、沈着することがアルツハイマー病発症のリスクを高めているということは、アミロイド仮説もまったくの見当違いではないということです。
ただし、遺伝的要因は「発症の決め手」ではない
■遺伝的要因より「環境要因」のほうが影響力大
アルツハイマー病は脳内の慢性炎症や毒素の蓄積によって起こるということは前述したとおりです。これは、体内の環境を整えることで炎症を起こりにくくし、毒素を排除することでアルツハイマー病の発症を遅らせたり、症状を改善したりすることができることを意味します。
つまり、遺伝的にアルツハイマー病を発症するリスクが高くても、体内の環境を整えてやることで、発症を抑えることができる可能性があるということです。このような考え方を「エピジェネティクス」と言います。エピジェネティクス研究の進歩により、病気の発症には遺伝的な要因は20~30%程度で、残りの70~80%は環境要因が栄養しているということが分かってきています。
アルツハイマー病の根本的治療のためには、この環境要因こそ改善することが重要であることが示されたのです。
■「炎症抑制、毒素の排出、栄養補給」で環境要因を整える
アルツハイマー病を根本的に治すためには、原因となっている3つの要因を解決することが重要だということが分かっていただけたと思います。炎症を抑え、体内の毒素を取り除き、栄養素を十分に補うことが、病気を発症する根本的な原因を解決しようとするアプローチであると言えます。これはアルツハイマー病だけに限らず、さまざまな慢性疾患にも当てはまります。このような病気の根本原因をなくす治療という考え方は、機能性医学の考え方そのものです。
標準的医療では、氷山の水面上に出ている「病気」という部分に対して治療を行います。一方、機能性医学では、水面下にある「根本的な原因」を把握し、整える治療をします【図表】。
どちらが正しくて、どちらが間違っているとか、どちらの方が優れているかということでは決してなく、お互いの特徴やアプローチの仕方の違いを理解し、標準的医療と機能性医学が相互に協力し合うことが大切だと思います。
小西 康弘
医療法人全人会 小西統合医療内科 院長
総合内科専門医、医学博士
藤井 祐介
株式会社イームス 代表取締役社長
メタジェニックス株式会社 取締役
株式会社MSS 製品開発最高責任者
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