本記事では、桃山学院大学経済学部で理論経済学の教鞭をとる中村 勝之 教授が、大学という教育現場の知られざる素顔を、経済学の観点から切り取り、解説します。

四大・短大進学者の約7割が私立へ

次に図0-2を見てみよう。

 

 

これは1978~2020年度までの四大および短大の在籍者数の推移を示している。

 

まず、四大の推移から確認すると、1978年度において国公立442,664人、私立1,419,598人の合計1,862,262人が在籍したのが、1982年度には国公立477,773人、私立1,339,877人の合計1,817,650人まで低下する。

 

その後は増加の一途をたどり、2005年度には国公私立を含めて285万人を超える。だが、それ以降は横ばいで推移している。当然であるが、この動きは図0-1の四大進学率の動きとほぼ同様であることが分かる。

 

一方、短大の推移を確認すると、1978年度において国公立32,940人、私立347,359人の合計380,299人だったものが、1980年度において国公立33,687人、私立337,437人の合計371,124人にやや減少する。

 

その後、1985年度は丙午(ひのえうま)の影響か、371,095人に再度落ち込むものの増加に転じる。だが、国公立は1991年度の40,669人(私立との合計504,087人)、私立が1993年度の490,787人(国公立との合計530,294人)を境に低下し始める。

 

その傾向に歯止めがかかることはなく、2020年度には国公立5,582人(※2009年度をもって国立短大が廃止されたため、2010年以降における国公立はすべて公立短大である。)、私立102,048人の合計107,630人、1993年度のピークに比べて20.3%の水準にまで落ち込んでいる。この動きも図0-1にある短大の進学率にほぼ対応したものだと言える。

大学業界への供給~大学数と学部・学科数~

図0-2を見て驚くべき事実が明らかになる。それは、高等教育がマス段階からユニバーサル段階へ移行するにあたり、需要者たる高等教育進学者の大半が私立に向けられてきたことである。

 

四大を例にとると、全在籍者数に占める私立在籍者の割合は1978年度では76.23%、この40数年間で一番低くても1987年度の72.36%、その後は73%台で推移している。なお、近年では微増傾向が続き、2020年度には74.02%に達している。

 

短大にいたっては1978年度において全在籍者数に占める私立のそれは91.34%、この40年間で一番低くても1985年度89.68%、その後も90%を超える水準を維持している。こうして四大・短大合わせると、高等教育需要者の実に4分の3から5分の4程度が私立に向けられているのである。

 

※本記事は、2021年9月刊行の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

 

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中村勝之

山口県下関市出身。大阪市立大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。桃山学院大学経済学部教授。専門は理論経済学。著書に『大学院へのミクロ経済学講義』(2009年、現代数学社)『〈新装版〉大学院へのマクロ経済学講義』(2021年、現代数学社)『シリーズ「岡山学」13 データで見る岡山』(共著による部分執筆、2016年、吉備人出版)がある。

本記事は幻冬舎ゴールドライフオンライン連載の書籍『学生の「やる気」の見分け方』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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