世界情勢に大きく左右される原油価格
まずは足元の原油動向を振り返ったあと、注目すべきポイントについてみていきたい。
WTI原油先物価格は、3月7日に130.50ドルの年初来高値をつけたあと、4月には一時93ドルを割り込む場面もあったが、足元では120ドルを挟んで高止まりで推移している。
4月から足元までの原油価格の動きを簡単に振り返ると、原油価格は、4月に入り、100ドルを挟んで上下に振れる展開となった。
中国でのロックダウンや米国を含むIEA加盟国による戦略石油備蓄の協調放出の発表を受け、11日には一時92.93ドルまで調整。その後はEUがロシア産原油の段階的な禁輸措置を検討するとの報道やリビア産原油の供給不安などを背景に反発の動きを強め、18日には109.81ドルまで回復した。
下旬にはIMFが世界経済見通しを下方修正したことで先行きの景気減速懸念が強まり、再び100ドルを割り込んだが、5月に入り、EUがロシア産原油を年内に禁輸することを盛り込んだ対ロ追加制裁案を公表したことなどが好感され、5日に一時111.37ドルまで回復した。
しかしその後は、EUによるロシア産原油の禁輸案を巡る協議が難航していることなどが嫌気され、再び100ドルを割り込む場面もみられた。
中旬から下旬にかけては①中国の都市封鎖解除への期待に加え、②ウクライナがロシア産ガスの欧州向け輸送を一部停止したことや、③フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟申請に傾いたことで、「ロシアによる報復的な動きが強まる」との見方などが価格を押し上げた。
6月に入るとOPECプラスが2日に追加増産を合意したが、供給不足を解消するには不十分との見方が強まり、120ドル程度まで上昇している(6月8日時点)。
バックワーデーションが継続する限り押し目買いを
5月31日時点の原油価格のフォワードカーブ(先物曲線)をみると、引き続きバックワーデーション、つまり期先物より期近物のほうが高い状態となっている。
保管コスト等を加味すれば、期先物が高くなるコンタンゴの形状が通常である。もっとも、足元のバックワーデーションにより、先物のロールオーバーにともなう利益獲得期待などの投機的な動きも含めて買いが入りやすいといえよう。
また中国のロックダウン解除の動きに加え、米国が本格的なドライブシーズン(※)に入ることから短期的な需要の押し上げ等も含めて原油価格は当面、高止まりしやすい状況にあると考える。
※ドライブシーズンとは通常、5月最終月曜日のメモリアルデーから9月最初の月曜日のレーバーデーまでを指す。
とはいえ、秋以降も高原状態が続くかどうかは、地政学リスクの継続の有無に加え、グローバル景気の減速にともない原油需要がどこまで減少するかが大きなカギを握るとみている。