(※写真はイメージです/PIXTA)

最近は老後に生活資金が不足し、経済的に破綻する高齢者が少なくないことから、「長生きリスク」などという言葉をよく目にするようになりました。また「老後資金2,000万円」が流行語となり、その真偽や真意も含めて議論が展開されています。一体いくらあれば安心した老後を迎えられるのか、そのために今から何をすればよいのか、現役世代である私たちは待ったなしで考えておかなければなりません。辻・本郷税理士法人の菊池典明税理士が解説します。

いくらあれば老後破産しないのか?

年金生活まであと何年で、現在の貯蓄がいくらあって、将来受給する年金がいくらなのかによって答えは変わってきます。いくらあれば足りるのかに画一的な目安はありません。

 

ただひとつ確実に言えることは、「月々の支出が少ない人ほど、老後に必要な貯蓄額は少なくて済む」ということです。

 

先ほどのBさんが老後も破産せず90歳まで生きるためには、「毎月の不足額:25万円」×「65歳から90歳までの残余月数:300ヵ月」=7,500万円の貯蓄が現役時代に必要です。一方Aさんは年金受給額以下で生活していますから、その中から貯蓄もできるということになります。

 

■老後破産を避けるには「健康維持」も重要

そうは言っても、死ぬまでずっと健康でいられるとは限りません。介護が必要になるケースもあるでしょうし、大きな手術をしなければならないこともあるかもしれません。

 

介護サービスには様々なものがあります。介護保険施設である特別養護老人ホームに入所すると最低でも月5万円~15万円が必要ですし、デイサービス(通いのサービス)に週2回通うと月1万円~2万円かかります。また自宅にヘルパーを招いて介護サービスを受けると、これも月1万円~2万円かかることもあります。

 

介護が必要な状態にならなくても、通院や服薬で医療費がかかることも忘れてはいけません。健康であり続けるということは、老後破産しないための大きな条件のひとつと言えそうです。

必ずしも「支出レベル=生活レベル」ではない

現役世代の方、特に高額所得者である方は、支出レベル=生活レベルと考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。このコラムではここまであえて生活レベルという言葉を使っていません。必ずしも支出レベル=生活レベルとはなりませんから、身近なところから楽しく節約する方法を検討してみてはいかがでしょうか。

 

私たちの周りには、節約の上手な方が多くいます。同じものを手に入れるなら少しでも安いほうがいいし、安く手に入れたことで充実感や達成感も得られて精神的にも良いでしょう。このような体験は、残念ながら現役時代に高額所得者であった方はあまりないのかもしれません。

 

仕事が忙しいと、ついつい食事の準備が面倒で外食が多くなりがちですが、外食を減らして家で食事を取る回数を増やすことは経済的で健康にも良いでしょう。食事だけでなく、たとえばタクシーに乗るのではなく歩いてみる、毎月の水道光熱費を意識してみる、格安スマホへの乗り換えを検討するなど、支出を小さくし、かつ、生活を充実させる方法は日々の暮らしの中にいくつもあります。これらを実践したからと言って生活レベルは下がりません。むしろ満足度や充実感は高まるのではないでしょうか。

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