恐ろしい…税務調査官「調査のため、ご自宅に伺いたい」の真意【税理士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の申告書を提出したら、気になるのはその後に待ち受けている「税務調査」。一体、どれくらいの確率で来るのでしょうか? また、その真の目的は…? 辻・本郷税理士法人 井口麻里子税理士が解説します。

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わが家にも税務調査は来る?対象になりやすい家庭とは

近年、高齢化の影響により死亡者数が増加しています。10数年前までは亡くなる方は年間100万人、と言ったものですが、現在では年間約130万人の方が亡くなっています。このうち、相続税申告書の提出が必要な方は約8%の11万人。

 

そのうち、約10,000件、つまり1割弱の方が税務調査の対象となっています。

 

では、いったいどういうご家庭に税務調査が来るのでしょう?

 

やはり、財産額の大きい方、生前の所得金額の多い方は税務調査の対象となりやすいでしょう。また、税務調査では、預貯金、有価証券などの金融資産が申告漏れ財産の約半分を占めますから、お金の出入りが不明瞭な方などは格好の対象となります。最近は海外に財産がある方に積極的に調査を行う傾向がありますから、こうした方も調査が来やすいと言えるでしょう。

事例:税務調査の対象となった佐藤一家

ここで、実際に税務調査を受けた佐藤裕司さん(仮名)のお話をご紹介しましょう。

 

裕司さんの父・誠さん(仮名)は2年前に他界しました。誠さんは、自宅のほか、賃貸マンション一棟と金融資産5,000万円を遺してくれました。相続税の申告も納税も無事済ませ、1年が経ったある日、税務署から「調査のためご自宅に伺いたい」と連絡を受けたのです。

 

「相続人の皆さんにお会いしたい」との要請を受け、調査当日、裕司さんと妹の陽子さん(仮名)は、母が一人で暮らす実家へと集まりました。

 

午前中、調査官は、生前の誠さんの趣味や暮らしぶり、また、母との馴れ初めや結婚後の生活について穏やかに話を聞きました。世間話のようなものだったので、裕司さんは「やれやれ、気負いすぎたかな」と内心、緊張がほどけてきました。

 

お昼を挟んで午後、調査官がこう切り出しました。

 

「奥様は学校を出て家事見習いをし、お若いうちにご結婚されたってことでしたよね?」母が答えます。「そうです」

 

「親御さんから支援は受けず、若い二人で頑張った、と」「ええ」「奥様の親御さんがお亡くなりになったときも、何も財産は相続しなかった、と」「ええ、そんな大した家じゃなかったんですから、何も相続なんてなかったですよ」

 

そこで調査官がメモに目を落としました。

 

「奥様、A銀行に3,000万円、B証券に2,000万円をお持ちですが、これはどういったお金でしょうか? 年金はゆうちょ銀行で受け取られているようで、こちらはよくわかるんですが…」

 

裕司さんも陽子さんもびっくりしました。母はずっと専業主婦だったので、母の財産なんて考えたこともなかったのです。

 

「ご主人も同じ資産構成なんですよね。A銀行に3,000万円、B証券に2,000万円。これ、生前のご主人の所得からすると大変少なく思えるんですよ」と調査官が続けました。

 

母が笑みを浮かべながら答えます。「あら、だって昔の主婦はみんなそうしてきたでしょう? 夫の稼ぎは全部、私がやりくりして、夫の分と自分の分と、おんなじように増やしていったんですよ」

 

相続税申告においては、こうした妻の財産は「名義預金」といって、夫の財産として申告することになります。妻は持参金もなく、親からの相続もなく、外で働いたこともない。ゆえに妻の名義にはなっているが、その財産は夫の稼ぎが貯まったものであり、夫の財産でしょう、というわけです。

 

税務署は調査当日に自宅へ来る前に、あらゆる方法で事前調査を尽くしてからやってきます。亡くなった方の金融機関の口座だけでなく、配偶者、子供はもちろん、調べられる限りの口座は調べてきます。残高だけではなく、何年も遡り、亡くなった方から他の方へのお金の移動の有無も調べます。そのため、当の相続人がすっかり忘れていたお金のやり取りなどについても追及されます。「言わなければわからない」などという考えは、ナンセンスなのです。マイナンバーで金融機関の口座の紐づけが進めば猶更です。

 

次に調査官は妹の陽子さんに話しかけました。「陽子さん、お父さんが亡くなられたとき、C生命から2,000万円の保険金を受け取っていますね?」

 

今度は母と裕司さんが仰天しました。陽子さんは顔を真っ白にして震え出しました。

 

裕司さんが問いただしました。「なんでそんな大金、相続税の申告のときに言わなかったんだよ?」「だって、お兄さんには賃貸マンションを相続させるから、その分、陽子には保険で遺してあげるよ、ってお父さんが…。黙ってもらっておきなさい、って言ったから…。保険会社の人にも生命保険金はもらった人固有の財産だから他の相続人には関係ないって言われたし」

 

生命保険金などが支払われた際には、生命保険会社から税務署へ支払調書が提出されます。そのため、保険金を受け取った本人が黙っていても、税務署へは筒抜けになっているのです。

調査当日の目的は、単なる「申告漏れの確認」ではない

調査官は調査当日には十分に証拠を集め、申告漏れがあるなら、「ある」と確信を持ってやってくると考えたほうがよいでしょう。

 

ただ、なぜわざわざ相続人を集め、自宅で調査を行うのでしょうか?

 

それは相続人が無意識に、もしくは申告が必要であることを知らずに申告から漏らしたのかどうか、それとも意図して、故意に漏らしたのかどうか、その反応を見極めたいからという理由もあるのです。

 

結果として、母名義の預金と証券5,000万円および妹の生命保険金2,000万円、合計7,000万円が申告漏れとして指摘され、その分の追加納税と延滞税はもちろん、過少申告加算税というペナルティも課されました。

 

強引な調査官であれば、母や陽子さんが故意に財産を申告から外した、として、重加算税という重いペナルティを課されていたところです。もし重加算税を課されるような場合には、母については、故意に外したとみなされる財産の分だけ「配偶者の税額軽減」という大きな相続税の特例が使えないことになり、追加納税額は大幅に増えることになっていたでしょう。

 

税務署は徹底的に事前調査をしてきます。また、皆さんが知らないうちに様々な情報が税務署へ収集されています。相続税申告の際は、くれぐれも「うっかり」「忘れた」「思い込み」のないようにしましょう。

 

 

井口 麻里子

辻・本郷税理士法人

税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

 

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辻・本郷税理士法人 
税理士・1級ファイナンシャル・プランニング技能士

慶應義塾大学卒業。2009年2月、独立系の税理士法人としては最大手の辻・本郷税理士法人入社。

その後、2年半にわたりメガバンクのプライベートバンキング部門へ出向。税務顧問として、主に富裕層の相続対策、資産承継、事業承継の相談に応じてきた。

帰任後は、相続・資産承継部に在籍し、相続税の申告はもちろん、生前からの相続対策などの相続コンサルティングを主業務としている。日々、多くの顧客と接する傍ら、セミナー講師活動、執筆活動も盛んに手掛け、相続問題の解決に全力で取り組んでいる。趣味はトレッキング。

【著書】
『相続でモメずにお金を残したければ「この順番」で進めなさい』(すばる舎)
『55歳になったら遺言を書きなさい』(あさ出版)

著者紹介

連載税理士が解説!老後と「お金」のこと

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