中国重視を継続も、米国との関係も重視
一方で、マルコスファミリーの歴史から、汚職、縁故主義、貧弱なガバナンス・コンプライアンスに対する懸念が投資家の間であることも事実です。
実は、同様の懸念が2016年のドゥテルテ氏の選挙での勝利の際にも指摘されていましたが、実際の経済のパフォーマンスに大きな低下はなく、コロナ禍の2020年、2021年の特殊な年度以外は、従来のフィリピン経済の成長が維持されました。
具体的かつ詳細な経済政策は明らかになっていませんが、基本的にはドゥテルテ大統領の政策継承を提唱しているため、大規模交通インフラ開発プログラム「ビルド・ビルド・ビルド・リンク・リンク・リンク」と中国との緊密な関係の継続が行われる見通しです。
また、国の経済成長を支える大規模なビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)と外貨獲得の巨大な源である海外で働くフィリピン人(OFW)を強化する政策を継続すると見られています。
ただ、マルコス氏は同盟国アメリカについても「特別な関係」と言及していて、安全保障面ではアメリカや日本との良好な関係を保ちながら、国益を最大化するためにバランス外交にかじを切っていくものとみられています。
また、副大統領戦では、マルコス氏の副大統領候補として選挙戦を戦った現職のドゥテルテ大統領の長女サラ・ドゥテルテ氏が大きくリードしており、この面からも、ドゥテルテ大統領の政策が継続されるとみられています。ちなみにフィリピンでは大統領と副大統領は別々に選出されます。
つまり総じて、マルコス政権下では、ドゥテルテ政権の経済政策の継続性が見込まれています。
ALLHC:新しいデータセンター開発を決定
現政権そして次期政権においても重要政策となると見込まれている経済のデジタル化とクリーンエネルギー化の流れの中で、大きなニュースがありました。
AYALALAND Logistics Holdings Corp.(ALLHC)は5月10日(火)、グローバルなデータセンター運営会社・FLOW Holdings I Philippines Pte.と提携契約を締結し、全国の通信事業者に中立なデータセンターを開発することを発表しました。
フィリピンは、太平洋からアジアへの玄関口としての戦略的なロケーション、優れたネット接続性、再生可能エネルギーのための豊富な天然資源(太陽光、地熱、風力)により、アジア太平洋地域でデータセンターをホストするのに適した場所の1つとして急速に台頭しています。
フィリピンのデータセンター市場は、ビッグデータなどによるデータ量の急増、ビジネス、業務、サービスのデジタル化、5G接続、およびデータローカリゼーションの大幅な増加により、年間2桁の成長が見込まれています。
ALLHCは、2023年の第4四半期までに4.5メガワット(MW)の容量の施設を提供する計画です。
FLOWの数十年にわたるデータセンター設計・運用経験と、ALLHCの商業・工業用不動産開発の経験の組み合わせは、フィリピンのデジタルインフラストラクチャに対する高まる需要を満たすための理想的なパートナーシップと考えられています。
FLOWは、アジア太平洋地域全体のクラウド、ハイパースケール、エンタープライズデータセンターなどのデジタルインフラストラクチャエコシステムのネットワーク資産とファイバー資産に投資・運用し、現在、データセンター資産20億ドルを含む、500億ドルの運用資産があります。
Ayala Land、Inc.の子会社であるALLHCは、全国に工業団地、倉庫、冷蔵施設、および商業リース資産を所有しています。
主な開発としては、ラグナテクノパーク、パンパンガテクノパーク、カビテテクノパーク、などのフィリピンの有力工業団地があります。