(※写真はイメージです/PIXTA)

日本人の「貯金信仰」は根強く、「財産を貯金にしておけば安全安心」と頭から信じて疑わない人も多くいます。高度成長期の日本はそうだったかもしれませんが、時代はすでに変わっています。せっかく築いた財産を「日本円の貯金」の姿で持っていたばかりに、価値を大きく損なう可能性もあるのです。とくにこれから退職金を受け取る方は要注意です。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

金融資産が「預金ばかり」の人に気づいてほしいこと

平均的な日本の高齢者は、多額の金融資産をもっていますが、その内訳は大部分が銀行預金で、それ以外はほとんどが保険です。退職金を受け取って、そのまま銀行に預金しているのでしょう。

 

バブルのころまでの日本では、「株に手を出す」などという言葉があるくらいで、株式投資はバクチだから真っ当な人間は手を出してはいけない、と考える人が多くいました。高齢者のなかには、そうした考えから、株式を保有せずに老後資金を銀行預金で持っている人も多いのではないかと推察されます。

 

しかし、これは危険なことです。預金は株と違って暴落しないから安全だ、と思っていると、インフレが来たときに目減りしてしまう(買える物の量が減ってしまう)からです。

「住宅ローンの繰上返済を頑張った人」にも危険が…

最近では政府が「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」と株式投資を勧めているくらいですから、若い人でそうした考えの人は多くないと思いますが、それでも株は暴落しかねないから怖いという人は多いでしょう。

 

あるいは、現役時代は住宅ローンの繰上返済を頑張ったので、金融資産がほとんどないという人もいるでしょう。そういう人は将来、退職金がドカンと入って金融資産残高が急増するけれども、内訳はほとんどが銀行預金ということになりかねません。やはりこれも、インフレに弱い危険な状態です。

「退職金で、株を一気に買う」という発想では…

それならば、退職金を受け取ってから株を買えばいい、と考える人がいるかもしれません。「株や外貨はインフレに強いので、株を持てば預金がインフレで目減りしても最悪の事態は避けられる」というのが筆者のお勧めですから、ある意味では正しいといえるでしょうが、それでも問題はあります。

 

退職金を受け取った日が、偶然に株価の安い日であればいいのですが、運悪くその日が偶然に株価の高い日であったとしたら、大損をして惨めな老後を過ごすことにもなりかねないからです。

 

そうした目に遭うのを防ぐためには、住宅ローンの繰上返済をせずに退職前から株を少しずつ買っておき、退職金で一気に住宅ローンを返済すればいいわけですね。

 

ちなみに本稿で筆者が「株」と記すのは、実際には「日本株と米国株の投資信託」のことだと考えてください。どちらでも似たようなものなのですが、投資信託のほうが銘柄分散も時間分散も容易なので。

 

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