(※写真はイメージです/PIXTA)

「贈与」という制度は、相続税対策の王道として活用される一方、きょうだい間でもめる原因になりがちです。親子の何気ないやりとりや子どもたちへの配慮がかえって火種になることも珍しくありません。もめごとを避けるには、どうすれば良いのでしょうか? 税理士法人レガシィ『「生前贈与」のやってはいけない』(青春出版社)より、もめない贈与のポイントを解説します。

現金の贈与であっても「生命保険金」は要注意

形がないものであっても、生命保険は曲者です。相続のときにわかってしまうからです。亡くなった方が保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合、生命保険金を相続により取得したとみなされます。つまり、亡くなった親が掛け金を負担していて、子どもが生命保険金を受け取ると、それは親から子どもに対する相続となるわけです。

 

子ども全員が受取人になっていれば問題はないですし、跡取りが1人だけ受取人になっているのも理解できます。ところが、3人のうち2人だけが受取人であったことから、きょうだいがもめてしまったという例を聞いています。

 

■「自分だけ、生命保険金の受取人から外されている」相続の場で知った長男

受取人だった2人はそれぞれ結婚して独立していたのですが、残りの1人である長男は独身で、亡くなったお母さんと同居していました。おそらく、お母さんは同居している長男に対して、普段から何かと援助をしていたのではないかと思います。それで、バランスをとるために残りの2人を生命保険金の受取人にしたのかもしれません。

 

生命保険金には非課税枠があるのですが、相続に際しては相続財産に合算し、申告しなければなりません。ですから、2人は自分たちだけが受取人になることが明るみに出るのを恐れたわけです。しかし、隠し通すわけにはいきません。やがては長男の知るところとなりました。

 

最終的には、なんとか収まったそうですが、一時はやや険悪な雰囲気になったと聞きます。無理もありません。自分の知らないところで、残りの2人が結託しているように感じたに違いありません。

 

親にしてみれば、生命保険金でバランスがとれると考えたのでしょうが、相続の場面でそれを知った長男の気持ちも想像しておくべきでした。できれば、長男にも別に何かを渡しておけばよかったのだと思います。

 

 

現金でなくても、ある程度まとまった資産を渡しておけば、長男も「自分は生命保険金の受取人ではなかったけれども、それは自分がこれまで同居してお世話になっているから、残りの2人とのバランスを考えたのだろう」と冷静に考えることができたかもしれません。

 

私たちが見てきた範囲では、「この子だけが憎くて渡すのが嫌だ」という親はほとんどいません。たいてい親はバランスを考えているのです。ただ、それを子どもたちにうまく理解してもらえるようにしないと、もめる原因になってしまうのです。

 

 

天野隆

税理士法人レガシィ代表社員税理士、公認会計士、宅地建物取引士、CFP

 

天野大輔

税理士法人レガシィ代表社員税理士、公認会計士

 

 

<関連記事>

「お姉ちゃん、介護をありがとう。全財産は、跡継ぎの弟君へ」相続の現場で放たれた、強烈な一言【弁護士が解説】

二女には「一生分のお金」を…生前贈与した母の、完璧な遺言書

調査官の思うツボ…税務調査「トイレを貸してください」の真意

税務調査官から依頼される「一筆」に応じてはいけない理由

見逃さないで…「認知症“一歩手前”の人」に見られる「行動」【専門医が解説】

 

あなたにオススメのセミナー

    ※本連載は、税理士法人レガシィ、天野隆氏、天野大輔氏による共著『 「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識』(青春出版社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

    「生前贈与」のやってはいけない 知らないと損する相続の新常識

    税理士法人レガシィ
    天野 隆
    天野 大輔

    青春出版社

    近い将来、贈与税が改正されるのでないか、として注目を集めている「生前贈与」。相続対策の王道ともいえる節税術が使えなくなる前に、「駆け込み贈与」をしようと考える人が増えています。しかし、単に贈与をすればいいわけで…

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    TOPへ