【事例】自分亡き後、独身・フリーターの二女が心配
他方、妹の良子(仮名)は勤めも長続きしたためしがない。お金が無くなるとアルバイトをして糊口をしのいでいる。独身だが、厄介者かというと、そうでもない。時間ができると公子の住む高齢者向賃貸住宅を訪ねてくる。帰り際、公子は財布から一万円札を出し、良子に手渡す。あれだけ楽しい時間を過ごせたのである。少しくらいお小遣いを渡しても罰は当たらない。
ただ、公子は良子が愛おしいほど、将来が心配でならない。ある日、公子は自身がこの世を去った後も、良子が一生、生きるのに困らないよう、策を講じた。
「遺言書+生前贈与」の合体技で特定の人に多く残す
親としては、自分の死後も、子どもには変わらず幸せに暮らしてほしいと願うものです。兄弟の中でも、定職に就いていなかったり、体が弱い子がいたりすると、なおさら心配になります。
また、孫など、かわいい、愛おしいと感じ、その子に財産を多く渡したいという心情が生じることもあるでしょう。あるいは、子の夫(妻)が浪費家だったりすると、せっかく築いた財産も浪費する可能性もあるので、まじめな夫婦に財産を継いでほしいと思うときもあるでしょう。
特定の誰かにすべて財産を渡そうとしても、遺留分というものがあり、もらえなかった人は最低限を兄弟等に請求する権利があります(関連記事『父急逝で自宅売却危機…「前妻の子」の相続分を拒否するには』参照)。
公子さんが打った手とは、遺言書と生前贈与の合わせ技です。生前に公子さんはマンションを良子さんに贈与しました。生前贈与には贈与税がかかりますが、さまざまな非課税制度があります(後述)。
ただ、特定の相続人(良子さん)だけに生前贈与をするのは不公平。是正するために、法律では、遺産分割のときに良子さんが受けた財産も相続財産とみなす、「特別受益の持ち戻し」というものがあります(次項参照)。ただ、贈った公子さんとしては、持ち戻しをせずに良子さんに多くの財産を渡したい。そのときは、図表2のような遺言書を書くことで、持ち戻さない(持ち戻しの免除)ことができます。
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